on***コネタ第四弾

峰寿

「昔言ってたよな。」
「ん?」
音華が峰寿にマルボロを渡しながら訊いた。
「何が?」
「友達と、吸うことあるって。」
「・・・あー。まぁ、うん。まあね。」
「峰寿の友達って、どんな?」
「芳河。」
にこっと笑って峰寿が言う。
「え!あいつ!実は吸うの!?・・・む、ムッツリだな!」
「違う違う!」
峰寿は大笑いした。
「芳河は吸わないよ。てか、ムッツリって・・・」
「・・・芳河以外。」
「エリカ。」
「エリカ以外。」
「辰巳。」
「・・・辰巳、以外。」
「はは、何が訊きたいの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・俺が知らない・・・峰寿の友達・・・の話。」
ふてくされる。
峰寿は音華を撫でてからライターで火をつけた。
「もう、何年もあってないやつらばっかだよ。」
「・・・なんで?」
「俺が家継いだからね。」
「・・・・・・・継いだから・・・?」
「そ、俺、ここが本拠地になっちまっただろ。」
「・・・それまでは?」
「それこそアッチコッチ。いろんなところで修業してた。そこでいろんな友達作ってたよ。」
「・・・。」
想像できた。
峰寿って同性にもモテそう。や、変な意味じゃなくて。
「此処、結構他とは違うんだ。」
「・・・うん。わかる。」
「此処にいる奴らって、基本、単独調伏できる人間で、ま・・・少しだけ特殊なんだ。」
特別、という言葉を使わないあたり、峰寿らしい。
「だから、少ないでしょ此処、人。」
「うん。」
「めっきりそいつらと会う機会無くなっちゃった。」
はは、と笑って峰寿は言った。
「・・・それに、家継いだら、遠目に見た俺って、多分実感を持って負け組だったろうからさ。きっと敬遠。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・峰寿・・・。」
「されてんだろーねぇ・・・・。」
ふーっと、白い息を吐いて峰寿が言った。
なんだか胸のあたりが苦しい。
「で、なんでそんなこと訊くの?」
峰寿がにっこり笑った。
「や、うん。俺も、そういう友・・・・達・・・・欲しいっていうか・・・・・・・その。違う・・・えっと。峰寿の男友達とするたわいない話なんか聞いてみたくって。」
「・・・ふーん。」
白い煙。
「うーん・・・・。どうだったかな。」
遠い眼をした。

たいした話、してないな。


「この前すっげーかわいい子見た!」
「どこで?」
「町。市内。」
「どんな?」
「髪の毛ふわふわでさぁ!めっちゃ華奢!」
峰寿はタバコを吸って笑った。
男5人で、本当にしょうもない話で盛り上がる。
「それならいんじゃん。此処にも。」
一人が言った。
「誰?」
「エリカ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・こええ。」
その意見は全員一致でした。
「や、絶対可愛いだろ。なぁ峰寿?」
「えー?」
「お前仲いいじゃん!」
「んー。」
笑う。
「芳河の方が仲いいと思うけどね。」
「そう!それ!お前芳河とも仲いいじゃん!」
「毅。お前、なんだよ。エリカも芳河もアイドルじゃねぇぞ?」
「はは!だって桁違い。あいつ、10歳とかそこらで単身調伏って・・・。化けもん!」
全員が爆笑した。
峰寿はふっと白い息を吐いた。
「お前、雪とはどうなった?」
毅がカズに訊く。
「脈なし。」
爆笑。
本当にどうでもいいようなことで爆笑できるから、全員、すごい。
「なぁ峰寿はあれじゃん。ほら!蔓!坂音の子。婚約者だろ?」
「おお!そういえばいたなぁ!お前!いいよなー探さなくていいーみたいな!」
「・・・すっご年下なんだけど。」
峰寿は笑って見せた。
「いいじゃん。大人になったらそんなに気になんないって。むしろ若い奥さんって自慢だって!」
「んー。」
困ったように笑う。
そう。こういうとこ。此処ってそういうことに対して微塵も疑わないよな。
これって、普通のこと?って。
「え、もうチューくらいした?」
煙が肺の変なところに入った。
「はぁ!?」
「だって婚約者だろ?」
「するわけねぇだろ!!!!!!!!」
でかい声になった。
「っていうか、いっちゃんはいいよなー経験者だろー。」
「え!お前何!恋人いたの!?」
「いた。」
いっちゃんはにやっと笑った。
「くっそ。てめぇ先越しやがって。」
「殺す!」

なーんて、くだらないことしか話してない気がする。


「峰寿?」
「え!?」
音華が黙りこくった峰寿を見つめてた。
「どした?」
「え・・・あはは。や、思い出してた。」
「友達のこと?」
「そ。いろんなこと話してたなぁって。」
にこっと笑った。
猥談とか恋バナばっかりしてた、とか、言えない。
「あれだろ。エロい話とかにも花咲かしてたんだろ。」
肺の変なトコ、再び入ってむせた。
「えぇ!?」
「だって、中学とか、高校のやつも、そんな感じだった。」
咳き込みながらなんとか体制を整える。
「そ・・・そうなんだ。え、女の子も・・・すんの?」
「俺はしない。そんな友達いなかったし。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「あ、でも、女子もしてた気がすんな。皆、妙ににやにやするから、そういう時って解る。」
「・・・そ、そうなんだ。するんだぁ・・・。エリカとかそういう話になったら殴ってくるからな。」
笑顔で。
「するんじゃねぇの?え、普通だろ?そりゃ男女一緒にはしないけどさ。」
「・・・あ、そか。」
俺が男だからか。
「芳河とはすんの?」
「・・・・・・・・・・しない。」
「なんだ。あいつやっぱムッツリだな。」
「あはは!そんなんじゃないと思うけど!」
笑った。
「でも・・・なんかやっぱ楽しそうだなぁ。外の世界。」
外の世界。
峰寿がそう言ったのでなんだか、苦しくなった。
「・・・そうでもないよ。」
「俺も、学校とかで音華ちゃんに会いたかったよ。」
「・・・俺は、全然・・・・。友達もいなかったし・・・。会っても仲良くなれてたかわかんないけどな。」
「なれてたよ。」
峰寿はにこっと笑った。
「そうかな。」
音華はふうっと煙を吐いた。
此処にいて、友達がいた峰寿と、外にいて、友達がいなかった自分。
なんか、あべこべだな。
峰寿と自分の立場が違えば、きっと峰寿は楽しい外の生活を送ってただろうな。
人望もあるだろうし。クラスのリーダーとか・・・うわ、俺が絶対関わらないことにも関わりそう。
芳河はどうかな。
きっと光源氏ぶりは発揮されるだろうな。うわ、絶対俺、関わってない。外で会ってたら。
「音華ちゃん?」
「・・・峰寿。」
「ん?」
「俺も、峰寿の友達?」
「・・・。」
峰寿は一寸黙ってから微笑んだ。
「うん。大事な人。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう。」
撫でられた。
此処に来て、良かったこと。

友達が、できたこと。
 

on*** コネタ第四弾終わり

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