大ッ嫌いだ。

「ふむ。」
婆やは煙管を口から離し頷いた。
「なるほどな。そら、難儀したね。すまんかったな。」
「いいえ。ただ。」
「音華のことは逆効果やったか。」
「えぇ。」
芳河は目をつむった。
「難儀やね。」
「・・・えぇ。」
「難儀な子や、ほんま。」
「・・・・・・・だけど、それは。」
芳河は目を開く。
「だけどそれは、我々一門のせいでしょう。」
「・・・・・・・・・せやねぇ。」
頬はまだ腫れていた。

音華は部屋に閉じこもっていた。
嫌いだ。嫌いだ。嫌いだ。こんな処。こんな奴ら。
死呪の本も部屋の隅に投げ出されている。かといって数学や科学の教科書が戻ってきているわけでもない。
こうなってはもう何も手につかないことを音華自身も知っていた。
なんで親というものは、こうなのだろう。
なんで、こんなに捨てられた子どもがいるんだろう。
産んだんだろ。てめぇで。
今朝、芳河は滝行に音華を引っ張り出さなかった。朝食すら取っていないので、一度も顔を合わせてない。
「陰陽師なんかに、ならねぇ・・・っ。」
なるものか。なってたまるか。畜生、の気持ちで胸がはちきれそうだった。
あの夫婦の顔がまだ目に浮んでいる。
それも、あの彼の目線からの彼らだ。
心臓が痛んで仕方がなかった。
「音華ちゃん。」
びくっとした。障子の向こうからエリカの声がしたから。自分を呼んでいる。
沈黙して無視してみた。だけどエリカの影は消えなかった。
「音華ちゃん、居るんでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ。」
小さな声で返して見る。
「・・・開けていい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめ。」
「じゃ、このまま聞いてね。」
エリカはそこに座った。
「音華ちゃん。陰陽師が冷徹だと思ったでしょ。」
「・・・・思った。」
「こういうケースは結構あるんだよね。恨みを買った人間がそこから逃れようとするために陰陽師を頼る事。」
「・・・・・・・・・・・・・・あぁ。」
そういえば、初めに見た女も、女から恨まれていたな。
「陰陽師はね、人間の為にでもあるんだけど、実は霊の為にあるんだよ。」
「・・・・・・・・・。」
「と、少なくとも私は思ってる。恨みで苦しんでるのは、本人もそうなんだよ。魂ばかりが蝕まれるから。それを救ってあげられるのは、陰陽師だけなんだよね。」
確かに、見える人間にしか出来ないことだ。
「陰陽師は裁判官でもなんでもないから、人のことを裁いたりする権利がないんだよね。だから芳ちゃんも何もしなかったんだよ。ただ私達にできるのは、・・・霊を救ってあげることだけだから。それ以上のことはできないんだよ。」
「でも・・・!!!」
音華が叫んだ。
「この境界線は掟なんだよ。それを破ったら陰陽師はただ均衡を破るだけの存在になってしまう。死界とこの世の均衡を崩すだけの破壊者になってしまう。」
「・・・・・・・でもだからって、見て見ぬふりしろって言うのか。」
「多かれ少なかれね、恨みを買った人間っていうのは、対価を払うことになるのよ。」
「・・・・たいか?」
「罪に対する、対価。つまり報い。」
「・・・・・・・・そんなの、分からないじゃないか・・・・!」
「生きている間における、生活の制限。つまり捕まったりしたら此処で払うことになる。そこで払わなかった、もしくは払いきれなかった人間は死んだ後、ゴーストにしかなれなかったり、するから。」
エリカが悲しそうな声を出した。
「ゴーストになってしまえば、死神に排除される。そしたらもう2度と転生できない。コレが対価よ。」
「・・・・芳河はそれが解ってたから、何もしなかったていうのか。」
「多分ね。芳ちゃん結構陰陽道に関することでは無情だから。」
エリカが笑った。
「音華ちゃん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「此処、出ていきたいんだったら、そうしたらいいと思うよ。」
「・・・・・っ!」
「もちろん、今出たら危ないけどね。最終的に、だよ。」
エリカは付けたした。
「私は、音華ちゃんの味方でいるからさっ。」
よっと、エリカは立ち上がった。
「じゃあ、お昼御飯は一緒に食べようね。今日、夕方には皆帰ってくるから、騒がしくなるし!」
「・・・・・・・・・・うん。」
エリカは、笑ってそのまま廊下を通り過ぎていった。
「・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・陰陽師・・・。」
くそったれ・・・・。
涙が出そうになった。


昼、おずおずと障子戸を開けた。
そこに出ていた、音華のための膳。それから、芳河が座ってた。エリカはまだ居ない。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
音華は顔をしかめたまま戸を閉めてまっすぐに膳の前につき、座った。終始無言。
芳河も何も言わない。ただ黙っていた。重い。重たい沈黙だ。
まだ芳河の頬は赤い。力いっぱい殴ったから、腫れている。
「・・・・・・・・・音華。」
びくっとした。芳河がいきなり口を開いたからだ。
「・・・・・なんだよ。」
「エリカなら少し遅れる。先に食べろ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・いただきます。」
手を合わせる。いつもは避けていたエリカを今日は何だか居なくて心もとないと感じている。
箸を取り、米を口の中に押しこむ。始終無言。芳河も食事を始めた。
芳河をちらりと見た。痛むだろうな。人に殴られた後の食事は痛みで美味しいとかそう言うこと、考える余裕はない。
音華は、何も言わない芳河に舌打ちをした。食事中のマナーはもとから知らない。
いっそ、怒って殴り返してくれたほうが楽なのに。いっそ、ひどい言葉をぶつけてくれたほうが、楽なのに。
「ごめん!遅れちゃった!先食べててくれた?」
戸をスタンと開けてエリカが飛び込んできた。
「あぁ。」
「ごめんねっ、音華ちゃん!」
「・・・いや。」
あら、気まずい。エリカはいそいそと膳の前に座りいただきますっと言って箸を握った。
「あと2時間で御山の麓まで着くって。」
エリカが嬉しそうに言った。
「ずいぶん早かったな。今回は何人帰ってくるんだ。」
「9人っ。」
芳河はそうか、と言って、そのまままた黙る。
沈黙。
「音華ちゃん。」
もう一度沈黙を破る。
「後で、ちょっと散歩でもしない?」
「・・・・・・・・・散歩?」
「おい外は・・・。」
芳河が口をはさみかけて止める。
「外には行かないわよ。行ったとしても私が付いてるんだから、問題ないでしょ?」
「・・・そうだな。」
「ねっ。行こ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。」
頷いた。エリカはにこッと笑った。
本当は何もしたくなかったけれど、さっきのエリカの言葉に少しだけ救われたのは確かで、一緒に行こうと思った。
まずい昼飯は、その後は無言で食べきった。

「ここ、私の部屋。入って。」
エリカが足を止めたのは此処だけ何故か西洋風に彫り物が施されている部屋の障子の前だった。
入ると其処は、明治・大正に日本に運ばれてきた西洋アンティークのような家具が揃っていた。
「小さい頃はイギリスで暮らしてたから、こっちの方が落ち着くの。」
「・・・・・・・・・へぇ。」
洒落た部屋だった。エリカらしいと思った。
「いつ日本に来たんだ?」
「6つの時。音華ちゃんが4歳の時かな。」
「・・・・・・・ふーん。」
その時、自分の母親の養女になったんだ、と思った。
その頃俺は何してた?先生の所で、生きていた。
「・・・音華ちゃん。」
「ん?」
ぼーっとしてたらしい。
「なんで養女になったのかって思ったでしょ。」
どきっとした。
エリカはにこっと笑った。
「視えるから。」
「・・・・・・・・・・・・・・え?」
「視えるから。他人には見えないものが。」
エリカは歩きだした。部屋を出てゼニ苔の生える湿った庭の方へ歩いた。
「そういう子どもが生まれたら気味が悪いわよね。」
「・・・・・・・・・・・。」
何も答えられない。何も訊けない。
「それも変な力を持ってるなんてオプション付きだと、気持ちが悪いとしか言いようがないわよ。」
「・・・・・・・・・・・・エリカ。」
エリカも・・・―――。
何も訊けなかった。何も云えなかった。
エリカは沈黙して歩き続けた。
「エリカは此処を出ていきたいと思うか?」
「・・・私ぃ?」
エリカが振り向かずに笑った。
「・・・そうだなぁ。するどい質問だ。」
桃色の髪の毛が風で揺れる。エリカのかわいらしい声も下手をすると風で消えそうだ。
「私は、陰陽師でいたい。」
「・・・・・・・・・・何故・・・・?」
理解が出来ない。今の自分にはそうは1%も思えない。
「救いたいから。」
エリカの綺麗な首筋が、髪が風に遊ばれて見えた。悲しい顎筋が見えた。
「此処は無情の世界だよ。此処は、澱んだ世界だ。」
「・・・・・・・・・あぁ。」
そうだな。
エリカはそれ以上、このことについて何も言わなかった。
「此処。」
また足を止める。
「え?」
「若草の間だよ。」
「・・・・・・・・・・。」
息が詰まる。
「此処で若草様はいつも調伏や払いをしてたの。」
「・・・・・・・・此処で。」
広い15畳の部屋。部屋の端っこに花がぽつんと活けてある。
「若草様だけは、この山から出ることは出来なかったから。全てのことは此処でしてた。」
「・・・・・・・・・見た事があるのか。」
「若草様の陰陽術?」
「・・・・とか。」
「あるよ。」
にこっと笑った。
「・・・すごい、人だったよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・そっか。」
俯いた。
「ねぇ音華ちゃん。知ってた?」
「・・・何を?」
また歩きだす。
「今の音華ちゃんの部屋。あの部屋、若草様が使ってた部屋なんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「あの部屋に、ずっと居たのよ。幼いときから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
知らなかった。でも、そうだ。と思った。あの光と闇の中で見た、
ムジナの婚礼の中で見た彼女は、あの部屋の中で泣いていた。あの部屋の中で銀糸を縫っていた。
あの美しい女性は、あの部屋に居た。一人。
「音華ちゃんも、あそこで生まれたんだよ。」
「・・・・え。」
「あの部屋で生まれたんだって。言ってたよ。」
にこっと笑った。
「あ。」
音華はエリカの顔を見れなくなってとっさに床に目をやった。いけない。涙がまた、出そうだ。
こんなに泣く女じゃなかった。こんな風に苦しいと思うって泣きそうになることなんて、なかった。
なんなんだ。此処は。自分の周りの全てが音を立てて変わっているのが分かる。
ずっと蓋を閉めていた箱のその蓋がカタンとずれたのが分かる。
「おかえり音華ちゃん。」
エリカがぎゅっと音華の手を握った。
だめだった。
涙が、また、出てしまった。
しばらく家の中を歩いた。どれほどでかいんだ。この家は。この社は。周りきれてない所もあると思う。
エリカと他愛もない話をして、そして自分の部屋の方に戻ってきたときだった。
「・・・・?騒がしいな。」
「え・・・?あぁ・・・っ帰ってきたんだ!」
エリカがぱっと顔をほころばせた。そして音華の手を掴んだ。
「いこっ。皆に紹介しなくちゃ!」
「え・・・えぇ!?」
そして、引っ張られた。
玄関へと。

一瞬顔が歪んだ。何人もの人間が寺の門の所で和気藹々と話しあっている。
音華は、いうまでもなくこういう空気が大の苦手だった。
その口の悪さで場の空気を凍らせることはしばしば。愛想笑いというものを覚えていない天然記念物なので大人からの受けは常によくない。
もちろん同級生たちからも遠巻かれる存在だ。正面からぶつかってくる不良達や、ひねた人間くらいが音華には丁度よかった。
そうやって出来た人間関係は結構目も宛てられないものだった。
つまり協調性にかける音華は無条件にこういう空気が苦手だったのだ。
「あっ、エリカ!」
エリカの姿を目に止めて茶髪の男が手を振った。
「峰寿!」
エリカも笑って手を振る。片方の手はしっかりと音華を掴んで話さない。そのまま駆け寄った。
「久しぶりっ。」
「ひっさしぶりだなぁ!元気にしてたか?」
「うんっ。」
峰寿という男はははっと笑った。ひょうきんそうな男の子で多分年は芳河と同じくらいか若いくらいだ。
「ん?そっちは?」
音華に気付く。音華は体を強張らせる。
「音華ちゃんっ。紫音華。」
「・・・・・・・あー・・・。あー!わかった。あの例の子だ。」
なんだ例の子って。顔をしかめる。
「はじめましてぇっ!俺、峰寿!峰寿泰樹。峰寿って呼んでねっ。」
軽い調子で言って笑った。
「・・・・は・・・はじめまして。」
それしか言えない。愛想笑いは0です。
「皆、よう帰ったな。」
一瞬で静まり返る。婆が奥から出てきたのだ。全員が婆の方に向きなおる。エリカはまだ音華の手を握ってた。
「姫様はまだ戻らぬが、先におぬし達が無事に修行月を終えて帰ってきてくれたことを嬉しく思うぞ。それぞれ今宵は疲れを癒し明日からもまた精進に励みぃ。」
「はい!」
全員が息をそろえて言った。
「それで。」
婆がちらりと音華を見た。嫌な予感がした。
「そこにおるんが、若草様の娘、音華や。」
やっぱり。嫌な予感は当たった。
全員が一斉にこっちを見る。顔も身体も全て強張る。
目を見ない。音華は下を向いた。こういう一斉に浴びせられる目は大ッ嫌いだった。
今までの経験上、いい目線を浴びたことはない。正直言って怖い。
「音華。」
婆やが呼ぶ。
「・・・・よ、・・・・・よろしく、・・・・・・・お願いします。」
搾り出した微かな声で言った。まだ目はこちらを見ている。
「よし。えぇな。ほな、今宵は宴や。しばし休んどき。」
「はい!」
そして流れ出すように解散したが、帰り際に投げられた音華への視線はなかなか根強いものだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
音華は下を向いたまま全員が去るのを待った。エリカはずっと側に居て手を握ってくれてた。
「・・・・・いこっ。今晩は、宴会だから。それまでにお風呂とか済ませちゃお。」
「・・・・・・・・・・うん。」
「そんじゃ、また後でね峰寿っ!」
「ん。お、おーうっ!また後でなぁ!音華ちゃんも!」
「・・・・あ、おう・・・。」
音華は頷いてエリカとその場を去った。峰寿の横に芳河が立っていたので峰寿のほうを上手く見る事が出来なかった。
「・・・・・・・・・で?芳ちゃーん。そのホッペはどうしたの?」
「気持ちの悪い声を出すな。」
芳河が言い捨てる。
「綺麗な顔が台無しじゃーん。ついにどっかの女の子にでも手ぇ出したか?」
峰寿がからかうように言った。
「お前と一緒にするな。」
「ひっでー。」
笑った。
「で?実の所、何やらかしたんだ?」
「何もしてない。」
「や、殴られるようなことしたんだろ。芳河が。」
「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ。お前が帰ってくるととたんに此処がうるさくなる。」
「ひどい言われようですこと。」
笑った。
「誰に殴られたんだ?婆やか?」
「音華だ。」
「音華ちゃん?」
ふっと吹き出した。
「まじで?なんで?やっぱお前手ぇだしたんだろ。」
「金縛りにあいたいか。」
鋭く切りかえす。
「お断りします。」
丁重に。
「・・・峰寿。お前に頼みたい仕事がある。」
「まじで、早速ですか。お前さぁ長年の付き合いっての利用して、俺の事こき使いすぎだろ。」
「ぐだぐだいってないで黙って聞け。」
「へいへーい。」
歩いて去っていく。二人。

宴には出なかった。
ひとり闇の中に転がって天上を見てた。
母親の育った部屋、自分が生まれた部屋。
息を深く吸い込んで見る。
何も感じない。温かさも何もない。だって誰も居ない。
ガタン・・・
物音がしていつの間にか閉じていた目を開けた。
「・・・・・・・・・・・・・・誰だ?」
縁側に音がした。
誰かが柱にもたれかかって座っている。一人。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
顔をしかめて音華は起き上がった。そしてそっと近づいて障子を開けた。
「・・・・・・・・・・お前かよ。」
嫌そうな顔をした。芳河だった。
「何してんだよ。」
「避難だ。」
「はぁ?」
芳河は、はー・・・と深いため息をついた。
「・・・・・・・お前、酒飲めねぇのかよ。」
「飲める。」
確かに片手には勺。
「宴が苦手なだけだ。」
「・・・・・・・・はっ、非社交的芳河くんには不向きだよな。」
「お前に言われたくはない。」
カチンとする。
「だからって此処に来ることねぇだろ。あっち行けよ。」
「・・・・此処が落ち着く。」
こっちが落ち着かないんですよ。とは言わない。
「あっそ。」
音華は体を引っ込めた。
「音華。」
「んだよ。」
「若草殿はな。」
どきっとした。
「宴の席でも清水しか口にしなかった。」
「・・・・あの水か。」
「あぁ、清められた神聖な水だ。」
「・・・じゃ酒、飲んだことねぇんだ。」
「いや、地が生み出した特殊な酒がある。それを口にすることもしばしばあったが、そんなに好きではなかったらしい。」
「・・・・・そうか。」
部屋の内側、障子越し、二人の会話。音華は柱にもたれかかってため息をついた。
「だからか、すぐに宴から足を遠のかせて自分の部屋に戻ってきてた。」
「・・・・・・・・・・・。」
「よく、此処で話をした。」
月が出ている。芳河の影が酒を飲む。なんだかその影は遠くを見ているようで、寂しそうだった。
「・・・どんな。」
「・・・・話か?」
「・・・・・・おう。」
「・・・他愛もないことだ。色んなことを教えてくれた。」
教えてくれた。この言葉、胸を締める。言ってみたかった。ずっと。親が教えてくれた何かが欲しかった。
「・・・・・・・・・・そうかよ。」
音華はもう一度ため息をつく。
「・・・・殴ったことは・・・・謝んねぇ・・・・。」
呟いた。
「・・・・俺はお前らが・・・とりわけお前が大ッ嫌いだ。」
天上を見上げる。
「・・・・・・・・・そうか。」
芳河が言った。その声は満足げに笑ったようだった。
「見てろよ。」
みてろ。
「絶対いつか、お前らをぎゃふんと謂わせてやるからな。」
「・・・・・・・楽しみにしておく。」
絶対いつか、全部ひっくり返してやるからな。
この世界は、無情だなんて言わせないから。


On***9 終わり


 

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