on***コネタ第参弾

喧嘩友達って、言うのかもしれない。

「ケムいってんのよ。」
「・・・あぁ?」
後ろから声がかかって音華は振り向いた。
「ってめーかよ。」
ほほが痛んだ。傷がある。
「・・・喧嘩?」
「・・・っせーな。どうでもいいだろ。」
音華はふいっと前を向いた。
暁はその背中を見てため息をついた。
そして音華の横に座った。
河川敷の階段。
夕日。
橙。
向こうから夜がやってくる。
「・・・んだよ。」
「消して。」
「はぁ!?」
「消してよ。煙草。」
「ざっけんな!なんでお前のためにけさねぇといけねんだよ!」
「・・・じゃあその一本、早く吸い終わって。」
「・・・・・・・・・・・・・はあ?」
それまでいるのか。此処に。
「ちっ・・・・・。」
音華は舌打ちをし煙草を吸った。
気持ち、早めに。
「・・・なんだよ。」
「・・・喧嘩って痛そうね。」
じっと音華の擦り傷がついた頬を見る。
「別に。・・・・っていッで!」
「・・・痛いんじゃない。」
「さ!触るやつがいるか!?」
暁は、大きな眼を音華からそらして夕陽を見た。
「・・・・・・・ってー・・・。」
「誰と?」
「・・・ここら辺の不良たちだよ。梅東高とか。中学ぐらいから喧嘩してるからな。」
「ずーっと?馬鹿なの?」
「っさいな。」
「なんで?」
「・・・・・・・・・・忘れた。」
覚えてなかった。
「・・・ふーん。やめないの?」
「・・・あっちがやめたらな。」
「・・・・・・・・・・・・終わらなさそうね。」
「かもな。」
煙草。終わっちまった。
音華は吸いがらを吸いがらケースに入れた。
そこらへん。真面目だ。
「なんなんだよ。今日。いつもは寄り付かないのに。」
煙草を吸っている時は特に。
暁は煙草が嫌いだ。喉が痛くなるとかなんとか、そういう理由らしい。
「・・・人を傷つけたいから、殴るの?」
「・・・は?」
「・・・傷つけたいの?」
「・・・・んなわけないだろ・・・。」
音華は暁が何を言おうとしてるのか分からなかった。
「・・・なんだ。」
「なんだよ。」
「・・・あんたなら、もしかして人を殺したいほど、誰かを傷つけたいって思ったことあるかと思って。」
「あるわけねぇだろ!」
音華は大きな声を出した。
「・・・なんだと思ってんだよ俺のこと!」
「・・・ごめん。」
暁は素直に謝った。
「ごめん。」
「・・・・・・・・・いや・・・いいけど・・・・・・・。」
暁の目が、少しだけ弱く見えた。
変だ。いつもは気丈で。いつもは口が達者で。強気で。
「お前・・・・・あんの?そういうこと。」
「・・・・ないわよ。」
「そか。」
風が吹いた。
「・・・お前、頭いい学校だよな。その制服。」
「・・・まぁね。あんたもバカ高ではないでしょ。意外にも。」
「一言多いんだよ。お前は。」
暁は黙った。
「・・・なんかあったのか?」
「・・・ないわよ。」
「・・・。」
音華は黙ることにした。
暁の傍らに、青い袋。
「なんだ、お前CD買ったりするんだ?」
「するわよ。」
「音楽好きなのか。意外だ。」
「・・・・・・・・・・・・・そう?」
「・・・や、なんか想像と違ったってだけだけどさ。」
ま、言っても暁とはほとんど真面目に話したことがない。
「何聴くんだ?」
「・・・・・・・・見ていいわよ。」
音華はそう言われて青い袋から一枚のCDを取り出す。
「・・・・shima?誰だこれ。」
「最近デビューした歌手。」
「へー。いいのか?」
「知らない。聞いてないから。」
なんだそりゃ。
「ま、俺あんまり興味ねぇや。こういうの。」
「そ。」
暁は黙る。
一体なんだって言うんだろう。
「今日、お前変だぞ。」
「そう?」
「あぁ。」
いつもだったらすごい勢いで喧嘩してる二人なのに。
今日は仲良く並んで座ってる。
「今日、本当は喧嘩したくて来たのよね。」
「・・・はぁ!?」
暁の言葉に驚く。今日は本当にこいつおかしい!
「あんたくらいしか、喧嘩する相手いないし。」
「俺は願い下げだね!だってお前と喧嘩したら俺絶対勝つもん!」
「あほね。誰が殴りあうって言ったのよ。」
「はあ!?果たし状だろ!?今の!」
「・・・あんた、どこのヤンキーよ。暴走族にでも入れば?レディース?」
「つるまねぇ!」
「かっこつけてんの?」
「ざっけんな!てめ!上等だ!やろうじゃねぇか喧嘩!」
「却下。私痛いのいや。」
「なんなんだよ?!」
暁はため息をついた。
「殴り合いなんて、野蛮。」
「じゃあどう喧嘩すんだよ!」
「・・・あんた猿?」
「てめーは猿以下だ!」
「・・・それなはいわね。」
「殺すぞ!」
切。
「・・・・・・・・・・はっ・・・!」
「?」
突然、暁が笑った。
「・・・な、なんだよ。」
「なんでもないわ。」
そして立ち上がった。
「・・・帰んのか。」
「帰るわ。」
「そか。」
音華はもうすっかり沈みかかった夕陽を見た。
「暁。」
暁は立ち止った。
初めて名前を呼ばれたからだ。
「・・・・・・・・・・・・・。」
そして沈黙。
「・・・なによ。」
「お前さ・・・なんで俺に、絡むんだ?」
「絡んでないわよ。好き好んで。」
「・・・のアマ・・・。」
舌打ち。
「・・・普通の、友達。とは、違うだろ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
暁はカバンをさぐり、中からチュッパチャップスを取り出して音華のほうに投げた。
「・・・!と!な、なんだよ!」
受け取って、見てみる。
コーラ味。
「・・・あげる。」
「・・・・・・・あ、ありがと。」
「・・・違うけど。」
「あ?」
「違うけど。別に、あんただって普通の人間じゃない。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「自分のこと特別だって思うのは中二までにしときなさいよね。恥ずかしい。」
「・・・べ!別に思ってねぇよ!」
「あっそ。中二病かと思った。」
「は?んだそれ。」
暁はカバンから新たに飴を取り出した。みたとこ、いちごミルクというあまったるいやつ。
っていうか、何個持ってんだ。飴。サンタかなにかか。
「・・・馬鹿ね。」
「はぁぁ!?」
暁はそのまま背を向けて去って行ってしまった。
「ってっめ!今度会ったら決闘だ決闘!」
無視。
遠くなる背中を見送る。
「・・・・・ち!」
舌打ち。
かっわいくねー!あの女!と心の中で叫ぶ。
だけど、口に含んだコーラ味の飴は、ずっと吸ってたタバコなんかより。ずっと、すがすがしい味がした。
 

on*** コネタ第参弾終わり

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