「・・・また・・此処かよ。」
橋の下。
「・・・おいアサ・・・」
「ショータ。」
「!」
ショータを呼んだ。ショータは緊張してたのか、びくっとして振り向いた。
「誰だよ・・・あいつ。」
「芳樹、高校、野球部ない高校行くつもりだったでしょ。」
「・・・んでそのこと。」
「青木に訊いた。」
「あいつ、しゃべりにも程があるぞ・・・」
舌打ち。
「だから。これ見て。考え直して。」
「・・・は?」
「ショータ。」
ショータのほうへ駆け寄った。ショータはやっぱり緊張してた。
「こっち、芳樹。」
「あ、はじめまして!俺、原田 翔太って言います。」
「・・・・はじめまして。」
芳樹は何もわからないまま頭を下げた。
「はい。」
「え?」
ミットを渡す。芳樹は受け取ってそれを見る。
「なんだよこれ。」
「座って。」
「は?」
「ショータが、投げるから。」
「何言ってるんだよ。」
私はじっと、芳樹の目を見るしかなかった。
「・・・こいつが、フォークを?投げるって?」
はっと、笑った。信じてない。
「投げれるんすか。」
「・・・な、投げるよ。」
「・・・いいすよ。捕ります。でも、一球だけすよ。」
「・・・う。うん。」
芳樹はミットを手につけて、ショータからはなれ、ゆっくりと座った。
変わってない。その構えも、全部。ちょっと大きくなっただけだ。
「いいっすよ、いつでも。」
「おう。」
ショータは大きく頷いて、ゆっくりと土を鳴らしてボールを掴んだ。
「行くぞ。」
「はい。」
私は息をのむ。
空が、青くて、息苦しい。




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