私は受験を終えて、春を向かえた。
それまで、ずっと、避けていた。
でも、きっと悲しい。
このままでは悲しい。
野球をやめてほしくない。
慎之介なら、絶対にそう望む。
私のために投げるといってくれたから。
誰かのために変われる子だから。誰かのために泣けるから。
「・・・アサヒちゃん。」
「こんにちは。」
「久しぶりー元気だった?」
「はい・・・。」
「高校決まったの?」
「はい。」
「おめでとう!・・・芳樹?」
「はい。」
「ちょっと待っててね。あ、入る?」
首を振った。
暫らく待たされた。だけど、芳樹は出ては来なかった。
申し訳なさそうな顔をしたおばさんが出て来て、謝った。
「・・・ごめんねぇ・・なんか体調が悪いんだって・・・。」
「・・・そうですか。」
それから、何回彼を訪ねても、会うことはできなかった。

「なぁ、美河、来てたの?」
「来てないよ。」
「この前も、来てたぞ。」
「なんでしってんの。」
「・・・よく見るから。この家の前で。」
青木はため息をついた。
「・・・避けてんのか。」
「・・・別に。」
「会ってやれよ・・・。」
沈黙。沈黙。沈黙。
「はぁ・・・。」
青木がため息をもう一度ついた。
「酷いことしたんだ。」
「は?」
「・・・酷いこと、しちまった・・・。」
「・・・何・・・」
「合わす顔がねぇんだよ。」
乾いた声。




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