Love Letter From Death  拍手へのお礼小説

―――死神・・・手に大鎌・・・黒いローブに白い骨・・・死を呼ぶ神。

200某年
くすっと彼女は笑った。
「あーあー・・・」
血が流れてる。アスファルトにこぼれている。その流血は留まることなく白いジャケットを染めていく。
「ごしゅーしょーさまっ」
その首元に黒金が光った。

「・・・・なんだ?」
彼は立ち止まった。
信号が青になる。
救急車のサイレンが耳に轟く。すぐ側で止まった。
「死んでるぞ・・・!」
「やだぁ・・っ!」
人々の騒ぐ声が聞こえる。
「うわ・・・グロイな・・・」
「事故だってよー・・・」
彼は足を止めることなく白と黒の筋の上を歩いていく。
「フーン。」
ま、俺には関係ないし。
そう思った瞬間に。何かの黒い光が視界に飛び込んだ。
彼は見た。
彼は黒い鎌を見た。
その刹那、身体の力が抜け、自分の視界が血と渦を見た。
そして耳元で聴こえたのは、非常に嫌な感じの、鈍い音。

眼を覚ますと、其処は、彼にとって、何処でもなかった。

  
「ん・・・・?・・・」
すっと目を覚ました。視界はまだぼんやりしている。
その視界にずいっと入り込んできたものがあった。
「おハヨーゴザイマス。」
「うお!」
彼は思わずのけぞった。
女だった。
「よかったぁっ。目覚めなかったらどーしよーかと思ったわ。あ、ハジメマシテっ☆」
―――・・・なんだ?
突然のことに彼は目を丸くする。当然だった。
「私、愛ってのっ。ヨロシクネ。DEATHナンバー確認していい?多田勇太さんっ。」
「ここは・・・?」
「いーから☆」
彼の質問には耳を傾けないらしい。
彼女、愛は髪の毛が長く、目はかなり大きかった。
気が強そうで、明るそうな顔立ちだった。
胸元に白いクロスがある。刺青にしてはずいぶんしっかりした白だった。
赤いキャミソールに、短いスカート。
いったい何者だって言うんだろう。
彼は一瞬でいろいろ考えた。


「手出して?」
彼女がそう言って、彼の手を求める。彼は素直にそれに応じた。
指には見慣れないごつい指輪があった。
すると彼女はよくわからない呪文、――後に死呪という名があることを知るのだが、を唱えた。
珍妙な空気が辺りを覆う。変な光が微かにまとう。
「な・・・っなんだッ!」
彼は慌てた。
突如として指輪からズルズルと鎖が生えたのだ。
そしてその鎖の先には銀色のプレートが付いていて、そこに12329という見慣れない数字が彫られていた。
「大丈夫☆No.は・・・・12329・・・とっ・・・・。」
読み上げて、1秒の間。
「は!?」
「!?」
びくっとさせられるほど、大きな声で彼女は驚いた。よく通る声だ。耳を突き抜けた。
「ちょっとゴメンっ」
「え・・・」
何が何だかわからないまま、彼は探られる。
「う・・あったちょ・・・まっ・・・・!うわあああああああああ!」
強引。
第一印象。
それに尽きた。

「・・・っやっぱしぃ・・・。間違って狩っちゃったぁ・・・」
ひとしきり探して満足(はしていなかったと思うが)した彼女は、ひきつった笑顔で言った。
そして、どおしよぉと呟いた。
雲行きが怪しすぎて、彼は不安になった。
「あのぉ・・・。」
とりあえず尋ねてみる。
「話がいまいち分かんねぇ・・・」
「あらそう。」
彼女はあっけらかんとした顔で彼の顔を見た。なんてどうでもよさそうに言うのかこの女。
「ひとりでつきすすむなよ」
彼は呆れた。
「私、 死神よ」
にっこり、すがすがしい笑顔で彼女が言ったところで、いったん彼の意識は飛んだようだった。


「あの、俺死んだのかよ?」
おそらく10秒のフリーズ状態の後の一言だった。
「う?」
彼女は軽い声を出す。
「うーん・・・。私が・・・間違って魂を狩っちゃったっていうか・・・。てっとり早く言うと・・・」
指で頬を指しながら上を見上げて彼女は考える。
「私は殺したー・・・ってごどな゛の゛ぉ〜????」
ぐるぐるぐるぐる彼女の目が回って、彼女はうろたえだした。
「知るか。知りたいのは俺だ。」
彼自身驚くくらい冷静なつっこみだった。
「っでも、魂は今『オーブ』から出てるから、自由なはずなのに体に帰らないわけないわ。」
なんのことだ?彼は全く分からない。
「うん。やっぱ死んでる。」
納得できたようだ。
「・・・思い出してみて?なんで死んだの?水死?事故死?焼死?このリストの印刷ミスかもっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
彼は二度目のフリーズをした。
「・・・・・わ・・からない・・・。」
彼は声を絞り出す。震えているようだった。
――― そうだ・・・俺・・・
「俺・・・名前も・・・歳も、なんで死んだかも・・・覚えてない・・・。」
彼女の顔は曇る。
「・・・?ってーことは・・・記憶喪失・・・?」
困惑しているようだった。
「・・・それはおかしいわ。死んでから記憶を無くすなんて・・・。」
むしろ焦っているようにも見えた。
「・・・だいたい・・・。真魂が体から抜けた直後眠っていたこと自体おかしいしっ。他の魂は皆正常に処置で来たもの、鎌が壊れてるわけじゃないし・・・。」
ぶつぶつ彼女は呟いて、はっとした顔をした。
「もしやあなたッ・・・・!」
彼の顔を見る。
「?」
―――トラブルメーカー(特異ケース人種)!!!めんどーい!!
彼女の心の声。爆発。
幸い彼には聞こえてない。
「なんだよ。」
「やだっどうしよっ。」
「?」
彼女はくるっと、振り返り、彼の顔を見る。
その眼がすごく大きくて、彼は眼で射られたような気がした。
「・・・なんか・・・冷静だね。死んだってのに?」
彼は、喉の奥まで言葉が出たのを感じたがその言葉が空気に出る前に口の中の温度で溶けてしまったらしい。
「―――・・・べつに・・・。」
ただ、信じられないだけだ。

私 死 神 よっ・・・・―――

この世界が、どこだかわからない。


「まぁ、一口で言うとアレだ。厄介なタイプの魂ってわけね。」
「ハ?」
彼女は説明を始める。こちらの前提知識は考えてくれてそうにない。
「つまり、狩る魂リストにリストアップされてない魂っ。あ゛―めんどー!」
おい、本音が最後の方に出てたぞ。
「このままじゃ、転生もままならないし、ゴーストにもなれないのっ。」
転生は分かったが、ゴーストの概念が分からない。
死んだ(らしい)俺はすでにゴーストなのではないだろうか。
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
一応聞いてみる。
「知らん。」
ズバリ。気持ちいいくらいのズバリ。
「え゛・・・。」
もしもーし。
彼女はへらっと申し訳なさそうに笑った。
「こーゆーのを扱うのが私の仕事でもあるのよね――。」
仕事?
「・・・君・・・えっと・・・。名前知らないんだネっ。ん――。」
彼女は可愛らしい顔で悩んだ。
「うんっ」
明るく、抜ける声。
「?」
「緋憂っ」
「・・・。」
心を奪う笑顔って一般的にこういう笑顔のことを言うんだろう。
そう思わせる、笑顔で彼女は「ひゆう」と言った。
「コレで決まり!君は緋憂ねっ。うん。かわええ名前!私のさ祖母がね・・・・・―――」
名前の由来を話す彼女の声が、なんだかうまく耳に届かない。
「あ、そうだ。緋憂。何かしたいことは?」
「え?」
なんだ突然。
「好きなことやってると記憶の糸口が見えてくるものよ。記憶が戻れば転生できるかもしれないでしょう?」
彼は、数秒黙り込みぽつりとつぶやく。
「墓」
眉間に少々しわをよせて、照れ隠しのような顔をしながら言った。
「自分の墓が・・・見たい。」
にこっと彼女は笑った。
「いいよーっ!」
指で丸を作って見せた。
「私どーせ世界中飛び回ってるからっ!」
「・・・・え・・・っ。ってこたぁ・・・俺って、一人で行動・・じゃないのかよ???」
なんだか彼は引いているみたいだった。
「うんっ。ったりめー」
彼女はにかっと笑った。
「・・・マジかよぉぉぉぉ―――!」
「ハイハイ静粛にっ☆」
彼の叫びがこだました。


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