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状況は思ったよりも悪かった。
町に着いた時、おそらく、丁度イルルの兵達がサリーナ・マハリンになだれ込んできたところだった。
民は逃げ惑っている。
町の中で血が飛んでいる。
悲鳴や、叫びが聞こえる。
「フェレス・・・!」
邸宅の方へ。
邸宅の方へ。
頭の中はそれだけだった。
「死ね!」
銀の光が私につきつけられる。
スラリ。
剣を抜く音が耳元でする。
あぁ、また。
その瞬間に血が騒ぐ。
肉を断ち、その光を撥ね退ける。
武民でもなんでもない人間の剣なんて、私を傷つけるに値しない。
ひどい光景だった。
町が、壊されていく。
胸が痛んだ。
自分の村を思い出した。
きっとこんな風に、壊されていったんだ。
自分がバルガンに着いた時には、村はすでに殺されていた。
怒りが湧いてきた。
別にこいつらに壊されたわけではない。
だけど、この町を壊すイルルの連中に怒りを憶えた。
容赦なんかしない。できないし。
剣を振り回し、走りぬけた。
だけど、走る最中。理解した。
此処は、もうだめだ。
「どけぇ!」
私の声に振り向いた兵たちの顔。
遅い。
今更剣を抜いたって。遅い。
ずばっと肉を切る。血を被る。
だけど、人数が多すぎると気付く。
ここからは入れない。
私はすぐに進行方向を変えて、別の入り口を探した。
「!」
ばっと顔を上げる。
塀がある。
高い塀だ。
近くに木もある。
「・・・・登れる。」
半ば自己暗示で呟いて、すぐに登りだした。
汗がひどかった。
背中をつたっているのが分かる。
血まみれの手が滑りそうだった。
だけど、一直線に。
私は、走った。


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