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「今日襲ってきたやつらだけどさ。」
服を着替えながら切り出す。
「・・・もしかして伯爵の家、誰かに狙われてるのか?」
フェレスはそこにいる。
カーテン越しだが。黙ってそこにいる。
「狙われてる・・・?」
「・・・んー。実は、私伯爵家の護衛だってんで他にも二回襲われたんだ。」
「どこで?」
「ブロイニュ。」
沈黙。
「や、別に思い当たる節がないならいいんだけどさ。っていうか、お金持ちだから狙われただけかもしれない。」
「・・・もし、本当に俺がアングランドファウスト家の人間だから狙われたというのなら・・・。いや。倒れてた連中はなんの紋章も掲げてなかったと思う。」
「匿名?」
「・・・あぁ。それか唯の野盗だ。」
「匿名だったら、性質悪いな。」
「まったくだ。」
「喧嘩売るならさ、堂々と名乗ればいいのにっと。」
しゃっとカーテンを開く。
「どうだ?サイズ、合ってるか?」
「・・・・・・・・・あぁ。」
「よかった。」
微笑んだ。
「俺は嫌いだな。」
「え?似合わないか?」
「そういう誇りのない真似をする人間だ。」
「・・・匿名希望者?」
「あぁ。それは家の恥だと思う。相手が貴族ならな。」
「・・・そういうもんかっ。」

夕餉。
「綺麗ですね、スザンナ。」
クシスが微笑んで言った。
「あ、本当に?や、ビラビラの服しかなくってさ。一番動きやすそうなのもらったんだ。でもこの裾、多分後で切るっ。」
「・・・・そうですか。」
クシスは笑ったが、絶対あの時呆れてた。
しかし、対照的な兄弟だな。
クシスはにこにこ、嘘か本当かわかんないような笑顔を常に顔に貼り付けてる。
フェレスは決して微笑んだり笑ったりしない。
「なぁフェレス。いつまでここにいるんだ?」
「一ヵ月半ほどだ。」
「あ、そうなのか?じゃあ、私はその頃にはガルバンにいるなぁ。思えば一年って結構長かったな。楽しみだ。」
「祖父に会うのが楽しみ?」
「そりゃあもう。手合わせが楽しみ。」
「母親は?」
「うん。元気だといいなっ。」
「兄や弟も、バルガンに住んでるんだったか?」
「や、兄ちゃんはいないよ。もう。3年前に村を出て行ったから。多分どこかで働いてるんだろうな。時々お金もって帰ってくれる。弟も多分今年旅に出る年だからな。会えるかなっ。すれ違いかもな。」
「そうか。」


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