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「泊まらないのか?」
振り向いた。
「ここに?」
フェレスは頷く。
「・・・なに?おおっぴらに誘ってる?」
「違う。」
あはは、と笑う。
「いいよ。そこらへんで寝る。」
「・・・体冷やすなよ。最近は霧が出る。」
「うん。大丈夫。っていうか、ありがとうな。こんなに旅費。」
「あぁ。この金で宿とって寝ろ。」
「うん。気が向いたら宿で寝るよ。月経痛が結構痛い時あるんだ、そういう時は宿のほうがいいからな。」
「・・・・・・・そういうことは、口にするなよ。」
「なんで。」
「・・・いい。」
呆れられた。
「じゃ。行くな。また、会おう。フェレス。」
「・・・あぁ。」
笑った。
もちろん、笑い返してくれることは期待してない。
手を差し出した。
いい匂いのする石鹸で洗ったからもう血の匂いとかしないし。
フェレスは温かい掌でそれをすくい取ってくれた。
そして、こっちをじっと見て言う。
「ありがとう、スザンナ。絶対に、薬。持って行ってやる。」
「・・・うんっ。待ってる。待ってるよフェレス。」
ぎゅっと彼の掌をもう一度強く握りしめて、するりと指を解いた。
その手を振って、背をむけ、真っ直ぐこの大きな建物から出た。
その日の空は、満天だった。


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