71,
「クリスティーナ・バルバラ。」
「は。」
セツは俯いたまま言った。
「顔を上げよ。」
緊張した。僕は拳をますます握る。セツはゆっくりと、その命令を拒むことなく顔を上げた。
真っ直ぐに。真っ直ぐにあの男を見た。その目は突き抜ける。きっとあの男の心臓を突き抜けている。そうい
う目なんだ。それがセツなんだ。
「素晴らしい武術だった。興であったぞ。」
「は。有難いお言葉でございます。」
もう一度頭を下げる。
気付かないんだろうか。自分の娘なんだ。あの男は、その事に気付かないんだろうか。
「一つ、願いを聞き入れよう。」
セツは黙った。僕は息を呑んで短剣を見つめる。だめだ。今その剣を抜くな。僕は・・・。
だけどそんな心配は要らなかった。セツは剣を抜くような真似はしなかった。
「は。私の願いは、陛下。あなたの直属護衛兵になることでございます。」
「・・・ほう。」
セツは頭を下げたままだ。なんだって?直属護衛兵?つまり、ハインリヒの地位を奪うということか。つまり、
王と常に行動を共にするということだ。僕は走り出しそうになる。
「お聞き入れくださいますか?」
「・・・あぁ。もちろんだ。」
「ありがとうございます。」
そこで歓声がまた起こる。王はその場をゆっくりと去る。セツに背をむけて。僕はまたひやっとする。切りか
かったりしないでくれ。頼む。だけどそんな心配も無意味だった。セツは王が居なくなったのを見ると、一先
ず立ち上がりそして、もう一度礼をして、その場を去った。
僕は、その後を追いたくて走り出した。セツ!セツ!待ってくれ!
だけど、見失うことになる。
人が多すぎた。僕は人に飲み込まれて、動けなくなる。



72,
「風だ・・・・・・・・・・・。」
彼は呟いた。
地下室の入り口の前で座りこんでいた。
カタン、カタンとその扉が鳴る。
「・・・そうか。もう・・・来るんだね。セツ。闇に溶けたまま。そこへ入っていくんだね。」
彼は目を閉じた。
「・・・セツ・・・・・。」
祈るように、そう呟いた。



 
73,
夜。都は盛大なお祭騒ぎだった。花火が鳴ったし。灯りは消えなかった。
僕は、疲れきっていた。だけど立ち止まるわけにはいかなかった。
人の波を掻き分けて、もう一度、もう一度城に戻らなくてはいけない。セツに会わないといけない。
セツは、殺す気だ。直属兵。そうして近づいて、そしてひっそりと、王を一番屈辱的な方法で殺すつもりだ。
そんなこと、させない。僕は口をきゅっと結んだまま、少しずつ、少しずつ歩いた。セツの呪いは、僕が破る。
だけど、おせっかいだっていわれたら?憎まれていたら?恨まれていたら?
関係ない。
僕は、足を速めた。
関係ない。関係ない。関係ない。僕は、僕がセツを好きだ。それで十分だ。セツを止める理由はそれで十分だ。
ラピス・ラズリのスペルなんか、僕は知らない。僕は君にそんな小さなことも提示してあげる事が出来なかっ
た。鍵だったのに。僕が鍵だったのに。躊躇して、隠して、卑怯な真似をして、本当はセツから逃げていた。
僕は。だから。僕は今、君を助けたい。その扉の向こうにある暗い階段を下させない。そこから手を引っ張っ
て、そして引き戻すんだ。
僕が城に着いたときに、ものすごい威力の花火が上がった。



74,
「王直属兵、クリスティーナ・バルバラです。」
セツは膝をついて、頭を下げた。
「今、この瞬間より、陛下のお命をお守りいたします。いつ何時も、お側におります。」
そとで花火が鳴っている。フィナーレだ。ものすごい勢いで鳴っている。
「クリスティーナ、我が身、お前に託す。」
「は。この身、潰えるまで、陛下のものとして扱いくださいませ。」
甘い声。掠れた。不思議な声。だけどその声は美しく。その顔は人をはっとさせる強さが在る。
日は変わろうとしている。真の闇が訪れるべき時間だ。まだ城の外では人々は騒いでいるが、城の中はとても
静かだった。ここだけは別の世界のように。まるで暗闇にぽっかり浮ぶ月のように。誰も居ない世界のように。
セツの金髪の髪の毛を。指が絡める。沈黙のまま。ここは別の世界だ。真空の世界だ。塔のある世界でもない
し、あの小さな村でもない。音がした。微かな音。それはスプリングが軋んだ音。
小さな明かり一つもない。窓からこぼれる月の灯りだけが、この世界の光だ。
首に当たる風は、熱い。この世界唯一の空気の流れは息だ。
背中に触れるのは、指。首に触れるのは息。髪の毛を撫でるのは、指。唯一曲げるものは、右の腕。
がっ!
「!」
ぎりぎりと、すごい力が左手に入る。同時に苦しむ者がいる。息なんかさせない。声なんて出させない。
首を思いっきり掴んだ。そして右手には引き抜いた短剣を構えていた。
「いい格好だな。ハンブル。」
低い声で、世界の沈黙を潰す。




 
「ぐ・・・・っ・・・まえ・・・は・・・。」
「顔に見覚えが無いのか?色欲で何も見えなかったか?」
セツは唾を吐き出した。右手は構えたまま。月の光を反射させている。その光はセツの瞳に吸い込まれる。
不思議な光が放たれる。
「まったく、大した獣だ、貴様は。」
セツは滑稽さに口を歪めていた。


彼は、うずくまってますます体を小さくしていた。
セツは、とっくに、目の前を通り過ぎたこと。知っていた。


「この顔に、本当に見覚えが無いのか?」
それと同時に、王は呻く、セツが思いっきり蹴りあげたからだ。裸足だろうがなんだろうが、セツの脚はすご
い脚力だった。それだけはルクも認めていた。
「ま・・・え・・・・。アマ・・・・・。」
「思い出したか。腐れ外道が。」
セツは笑った。その笑顔はとても歪んでいる。
「自分の娘の顔も、思い出せなかったか?あと少しで犯すところだった。」
短剣を向けて言う。王はその短剣にやっと気付いたようだった。
「こ・・・れ・・・は。」
「そう。お前の紋章の彫られた短剣だ。あぁ、よかった。その腐った脳みそも冴えてきたらしい。頭の無い野
獣と喋るのはいささか不愉快だった。」
セツはすこし緩めていた左手をもう一度強めた。王は苦しむ。
「さぁ、懺悔の時間だ。死ぬほど悔いろ。」
大きな爆発の音がした。


75,
「!」
その爆音は、花火のものではないと気付いた。人々が叫んだ。僕はうろたえた。だけどその次の瞬間に、その
人々を縫うように走ってこちらに向かってくる者達を見た。全員が武器を持っている。中には馬に乗っている
人間もいた。僕はとっさに端によけた。その瞬間、また一つの爆音と共に、城が崩れる音がした。
何が起こっているんだ?僕は混乱する。城の中から兵士達が出てくる。そして彼らと剣を交えあう。悲鳴が聞
こえるし、血が吹き飛ぶ。なんのスペクタクルでもない。これは本物の戦いだ。僕は悟る。ここ最近ずっと問
題になっていた反乱軍だ。人々は逃げ惑い始めた。だけどこの混乱ではうまい事いかない。城の外にいる兵達
は、この人の流れに妨げられてうまく城へ戻ってくる事が出来ない。僕は意を決した。この混乱に紛れて、城
の中へと滑り込んだ。兵士達も混乱しすぎて、何が何だか分からないらしい。灯りが次々に消えていくから、
視界が失われていく。そんな中僕は無傷でそこを突破することができた。手に持ってるのは小さなナイフだけ
だ。
「セツ・・・っ!」
僕は走る。城の中。記憶が嫌な音をたてて蘇ってくる。勝手知ったる城の中だった。そういう事実に嫌気さす。


 
体はしっかりと此処のことを覚えていた。通り抜ける道。近道や、兵士達がいる場所。そんなものが考えるこ
となく分かる。そして、王の間も、分かる。そこまでも最短の距離も、分かる。そしてそこにセツが居るとい
うことも。分かる。
間に合え。間に合え。
殺しちゃだめだ!
バシ!
「うあ!」
僕はいきなり手を引かれて後ろに倒れそうになる。
「これはこれは皇子様こんなところで何をしておられるのかな?」
「・・・っ離せ!」
僕はその手を引き抜こうとする。だけど離れない。
「エラルド!」
僕は気付く、エラルドが冷笑を浮かべて立っている。
「何をやっていたんだクシスの奴は。捕らえたと聞いていたんだがね。」
「うるさい!離せ!」
「離しはしないよ皇子様。これは一体なんの騒ぎかな?」
「知らない!」
「知らないではないだろう。」
「反乱軍だ!僕は関係ない!」
「・・・はぁ。なるほどね。やつらもなかなか考える。これは考慮していなかったことだ。」
エラルドは僕の手を引き、歩き出した。
「反乱軍も、無駄なご足労を。何もしなくとも、もうすぐ王の首は手に入っただろうに。」
エラルドに引っ張られて痛い手をもがかせる。
「君のお姉さんが、今頃王を殺しているよ。もしくは、犯されてしまっているかもしれないがね。」
僕の中で何かが弾ける。
「うあああああ!」
叫んでいた。そして、知らない感触を掌に感じていた。
「ぐっ!」
エラルドは呻いた。僕はとっさに持っていたナイフで彼の手を刺していた。手は離された。
「・・・っ!」
僕は半ば混乱しながら、走り出した。
「・・・・っ待て!小僧!」
待たない。
セツ。セツ。セツ。待って。待ってて。僕は。
ドン!
大きな音がして、僕の肩に熱いものが走っていた。
僕は、呻いて倒れる。エラルドの嫌な笑い声が聞こえた。


76,
二度目の爆発が聞こえた時に、王の目に恐れが浮んでいるのがはっきりと見えた。あぁ、心底嫌になるな。

 
この血を、この遺伝子を、この身に受け継いでいると思うと。吐き気がする。
全部消してくれ。掻き消して。書き直してくれ。そう願うのは当然の権利だと思わないか?
「私はな、ハンブル。」
セツは声を低くして語りかける。
外が騒がしくなってきた。外の兵がドアを叩く。王を呼ぶ。だけど鍵が掛かっている。そう、コイツが掛けた
鍵だ。
「お前を殺すために生きてきたんだ。捨てられた日から、ずっと、呪いを掛けられて。お前を殺さないといけ
ない身体になってしまった。」
セツキ・・・・。母親の声がする。
「どうしてくれる。相当数の人間を傷つける結果になってしまった。母さんは死んだよ。お前を呪いながら。
お前を愛した唯一の人間だったのにな。」
どこかで何かが爆発する音が聞こえた。それは鋭く、そして一発のみ。
「・・・っのれ・・・。」
「どうした。命乞いしろよ。」
セツは笑う。
「その権力で何とかしてみろ。実の娘も犯してみろよ。それとも謝ってみるか?」
「セツ・・・キ・・!」
ボク!セツは思いっきり殴った。王の顔から鼻血が出る。
「その名前で呼んだら次はその色欲から切り落としてやる。」
セツは最大限の殺気を放って言った。
「この国は終わりだ。スピカも、此処には戻らない。」
「・・・!」
「会ったよ。てめぇの・・・。は。笑えるな。大した物語だ。」
ひどい物語だ。
セツは目を細めた。
そして指先に更に涌く殺気に任せて、筋肉を動かした。目を開く。無表情だ。もう笑えない。このままだと絞
め殺せてしまう。王はよだれをたらした。


77,
僕は倒れた。痛い。痛む。肩。
「・・・っ。」
「ははは・・・っこの糞餓鬼め・・・!逃がさんよ。」
何だ今のは。黒い筒が僕に向けられていた。
見たこともない武器だった。
痛い。だけど、動く。足は動く、僕は必死に立ち上がった。そして走り出す。
「死ね!」
叫んだ瞬間だった。鈍い音がして、短い悲鳴がして、どしゃっと何かが倒れた。
僕は驚いて振り向く。
「・・・あ・・・っ!」
ルクだった。ルクがそこに立っていた、長い剣を振り、血を払った。エラルドは倒れていた。


 
「・・・ル・・・・っ。」
「早く行け。」
ルクはこっちを見ずに言った。倒れているエラルドを見下ろしている。
「あ・・・。」
「行け。お前にしかセツは止められない。」
「・・・っ、ありがとうございます!」
僕は肩を抑えたまま走り出した。いささか走りづらくはあったが、走らないわけにはかない。僕ははっとして、
ある道の前で立ち止まった。この道を通れば近道だ。僕は大階段を避けて小さい階段を選んだ。そして脚が千
切れそうなくらい走った。止まるな。走れ!走れ!
王の間の階に着いた時に僕はどきっとする。何人かの人間がいる。兵!真っ暗でよく見えないけれど、僕はそ
う直感する。戦う術の無い僕は一瞬躊躇する。だけど、そんな迷いは振り切った。そして走った。そして、そ
の彼らを押しのけて王の間の扉の前に立つ。
「おい!」
誰かが僕の痛む肩を掴む。ぬるっとして彼の腕は僕の肩から外れる。僕の肩はひどい激痛に襲われる。
「セツ!」
僕は力いっぱい。力いっぱい叫んだ。
「セツ!セツ!セツ!」
ダメだ、涙が出てきた。泣かないって決めたのに。涙が出てきて声がひっくり返った。
「セツ!セツ・・・っお願いだ・・・!戻ってきて!」
その地下へは、行かないで。
「セツ・・っ!」
呪いなんか選ばないで。
「僕と一緒に・・・生きて!」
叫んでいた。声はいくらかひっくり返った。僕は切れる息で、流れる涙で、止められない嗚咽で苦しくなった。
そしたら誰かが僕の手を引いた。
「下がってろ。」
「離してください!」
「ちょっと下がってろ。今開ける。行くぞ!」
その青年はにこっと笑って僕にそう言ってから、きりっとして叫んだ。そしてその合図と共に大きな丸太がド
アを打つ。それは3度ぶつかった時にドアをへし折った。
僕は走り出した。
「セツ!」
叫んだ。


78,
母さん・・・。私。殺したくなんかない。どうしても言えなかった。
短剣の重さが嫌いだった。逃げられない紋章が嫌いだった。
母さんが死んだ時に、城を出てから初めて泣いた。呪いだけが体に残ったのも分かってた。
それでも悲しくて、苦しくて、泣いた。
憎いと思った。この男が憎いと思った。


 
ぎりぎりぎり・・・・・。
絞めあげていく。自分の筋肉も悲鳴をあげているのに気付く。
右手を構え直してもう一度、短剣を光らせた。その刃に、男が写る。男の目から見れば、恐ろしい形相の女が
見えるんだろう。
「セツ!」
声がした。叫んでる。
「セツ!セツ!セツ!」
あぁ、この声。知ってる。ずっと塔の上にいた彼の声だ。
「セツ!セツ・・・っお願いだ・・・!戻ってきて!」
その地下へは、行かないで。だろ。
「セツ・・っ!」
呪いなんか、選ばないで。だろ。もう、聞き飽きたよ。私は、疲れたんだ。
「僕と一緒に・・・生きて!」
右手を振り上げた。王が最後の瞬間を悟り、目を見開いた。恐ろしさに負けた男の情けない顔だ。気絶しかけ
た男の最後の叫びは、空気が通らない喉から外へは飛び出さなかった。
ドスン!
鈍い音がした。
沈黙した。そして、ゆっくりと体を起こした。下を向いたまま左手を離した。
息をつく。深い、深い息だ。そして、男の顔を見て微笑んだ。男は失神していた。
「・・・最後は、あいつらに殺してもらえ。」
そういった瞬間に、ドアはぶち破られた。


79,
「・・・っセツ・・!」
ガコン。扉は、ひとりでに外れ落ちた。彼は立ち上がった。
「セツ!」
セツがそこに居た。地下の階段を登って、戻ってきた。
「・・・セツ!」
彼はセツに駆け寄った。セツは、下を向いたまま、暫らく黙っていた。
「・・・・戻って・・・きたんだね。」
彼が静かにそう言った。セツは小さく頷いた。そして深い、深い息をついた。
「・・・・スペル。・・・見つけたんだ。」
顔を上げて、セツは微笑んだ。
「・・・うん。そうみたいだ。」
彼もふわりと微笑んだ。
そしてセツを抱きしめた。
「あったかい。」
「あんたも、あったかいよ。」
「鍵は、回ったんだね。」
セツは頷いた。

 
「セツ。」
「何?」
「分かった?君は、・・・・・・なんて言ったらいいか分からない。」
「珍しいね。」
「初めてだ。」
くすっとセツは笑う。
「うん・・・。でも。分かったよ。」
セツは彼を抱きしめかえす。
「全部、分かったよ。・・・ありがとう。スピカ。」


80,
「セツ!」
スピカが押し倒さん勢いで抱きついてきた。
「セツ!セツ!・・・・っ。」
片手に持っていた短剣がスピカにあたりそうで手をずらしたら、結局体勢が崩れて押し倒されてしまった。
「・・・また泣いてるのか。スピカ。」
スピカは首を降った。
スピカの髪の毛を撫でた。いつか彼を撫でた時と同じ髪の感触だった。
「重たい。いい男がこんなとこで襲うな。」
「莫迦!」
「・・・莫迦じゃないよ。」
微笑んだ。
「ありがとう、スピカ。」
「・・・。」
ボロボロ涙をこぼしながらスピカは起き上がった。
そして短剣に目をやる。それからベッドの上で意識を失っている男を見る。
「・・・・殺して・・・無いんだね。」
頷く。
「本当に・・・?」
「見て分からないか?」
スピカはぶんぶん頭を振る。
「セツ・・・っ!」
またスピカは抱きついた。今度は倒れなかった。しっかり受け止めて、抱きしめかえした。
あったかい。そうだな。人はあったかいな。
「ようセツ。結局やっちまわなかったんだな。」
グルーがセツを見つけて言った。
「あんたたちの仕事だ。私の仕事じゃない。」
「ははっ。」
グルーは笑った。
「いや、俺はお前がやっちまうのかと思ってたよ。でも・・・よかったな。」

 
「・・・・?」
「いや?お前、今までずっと男のふりして俺らのこと騙してたけど。」
「・・・・・・あ。」
「なんだ。ちゃんと『私』って言えるんだな。」
「・・・いつから気付いてた?」
グルーは笑う。
「なめんな。ガキの頃から気付いてたよ。」
「・・・・そいつは・・・。恥ずかしいな。」
笑った。
「気にすんな。俺だけだ。気付いてたのは。」
そして背を向けて王を担ぎ出すのを手伝った。
「・・・いいの・・・?セツ。」
「何が。」
スピカが顔を上げて言った。
「・・・アイツ・・・・。」
「・・・あぁ。いいんだ。なんだ。私に殺して欲しかったのか?」
「ちがうよ!そう言う意味じゃなくて・・・。」
「スピカ。」
スピカの頬に触れる。
「この王政は崩れたんだよ。くずれた王政の王は、死ぬ運命なんだ。」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
スピカは俯いて、頷いた。
「行こう。」






*











*

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