Love Letter From Death 第5話  拍手へのお礼小説

「あ゛〜。もぉ・・・。」
マイカの憂鬱な声が漏れる。
「・・・。」
「五日目よ。探し始めてから!」
マイカがプンスカして言った。
「・・・。」
愛の形相は疲れ切っている。
「頼んでおいてなんだけど・・・。役立たずよ!」
ブチィ!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
声にならぬ声で、愛がブチ切れていた。
「じゃあ帰って。なにも見つけてないんでしょー?勉強しなきゃ。私、暇じゃないの。また明日来てねー。」
ひらひら。
手を振られる。
さらに愛はブチ切れていたのだが、声にならない様子だった。

マイカの人探しを手伝うと言い出して、それから5日がたっていた。
毎日愛はいろいろなところに行って、その特徴の男の子を探したのだが、一向に手がかりはないようだった。
緋憂はそんな愛を見ながら、おかしいな、と感じていた。
こいつがこんなに おとなしく 人の言うことを聞くなんて・・・―――
「あ・・・。」
愛が突然立ち止まった。
最近はずっと人間、つまり、実体をもつ形で動いているので彼女は地上を歩いている。
緋憂もその後ろについて歩く。
空の散歩はしばらく行っていない。
やっぱり地上を歩くのがしっくりくる。
たとえ実態はないにしても。
「ここ・・・だわ。ここ・・・。」
愛がつぶやく。
「何が?」
分からなかった。
だってここは墓地だ。
「俺の墓探しなら・・・」
「彼よ。」
「・・・?探してるやつか。」
「うん。」
愛は真剣な目で何かを探しているようだった。
「でもね・・・。」
すっと胸元のクロスに手をやる。
「今日の仕事は、生き霊相手じゃ・・・」
ゴオオ・・
クロスが光りだす。
「ないわよ。」
チャキ!
いつものように鎌を引きずり出した。
なんで今、鎌?
緋憂の視線に気づき愛は言う。
「ねぇ、覚えてる?マイカ・・・。夢でさえ彼に会えないって言ってたよね。望んでいるのに」
「え?あ、ああ。」
「生き霊ってね、強いの。生きてるから。だから望みはたいていの場合叶えてしまうのよ。」
「は?」
「つまりよ。こうしたい!って思ってることが生き霊になれば実現できちゃうの。六条の御息所も結局葵上殺しちゃったでしょ。」
いきなり源氏が出た。いや、非常に分かりやすいけれど。
「だからね、マイカが彼に会えないわけがないのよ。会いたいなんて軽い望み、生き霊になっちゃえばできることナンバーワンだからね。」
「・・・つまり・・?」
「会えない理由。」
愛がじっと緋憂を見た。
「それは、彼が死んでるから。」
「!」
ふっと愛の強い目が緋憂の眼を離れてリストに移った。鎌と一緒に胸のクロスから出していたらしい。
「でもリストアップがないのよねー。おっかしーなぁ。もしかしてやっかいもの二匹―?」
「・・・。」
緋憂はじっと、愛を見続けた。
「でも狩らなくちゃ。」
「・・・お前・・・。」
「!」
愛が不意に何かに反応した。
ザク!
音がする。
「こっち・・・!」
愛が走り出す。
「え、おい!」
緋憂もついて走り出した。
ザク!ザク!
土の音だ。土を、掘るような音。
「・・・・・・・。」
愛は立ち止まった。
そしてわざと聞こえるように、土をザザっと鳴らした。
「!」
そこにいた女が怯えた顔で振り向いた。
顔が真っ青だった。
「・・・・・。」
愛は何も言わない。
ただ、彼女の手元を見ていた。
彼女の手元にはスコップと、骨壷があって、その骨壷から一番上にかぶせてあった頭蓋骨の大きめな欠片を取り出して、土に埋めようとしていた。
その土の周りには無数の真紅の線香が刺さっていて、すさまじい芳香を放っていた。
「あ・・っ」
「・・・その骨。」
愛が呟いた。
―――人の骨見るの図鑑以来だな・・・。
緋憂はじっとその骨を見て思った。思いのほか冷静な自分に驚く。
「・・・何で知ったの?」
愛が睨み、見下ろす。
「魂を呼び起こす術・・・。まぁ、肉体がもうないから無理だけど・・・。死神に魂売ったとか・・・?」
「あの・・・っ私・・・!」
完全におびえた女を見下ろす愛の眼が容赦なくて少しぞっとした。
「ねぇ。」
その声も、恐ろしく鋭くて。
「知ってた?この術ってさ。死界で、重罪ってこと。おばさん。」
カチャ。
愛が鎌を構えた。その大きな釜に女はますます怯えるが、その場から動けないようだった。
「私ねッ!」
ザン!
「ひぃっ!」
愛が鎌を振りおろした。
それは彼の骨を切り裂いたように見えたが、骨にはひび一つ入らなかった。
ただ、同時にいくつかのまばゆい光を放つ光の玉が浮かんだ。
そしてそれは当然のように愛の鎌のオーブへと吸い込まれる。
「こーゆー、てめぇの勝手で命どーこーされるのが。」
―――こいつは・・・。
「だいっきらい。」
睨みつけた目が、恐ろしかった。
愛は振りおろした鎌を再びゆっくりと体の前に持ち上げる。
「だから死神(わたし)もキライ。」
一歩近づく。
「あんたもキライ。」
「助けて・・・っ」
彼女は逃げようとする。
「・・・あの人も。ね!
「・・・・・・・・・・!」
ザン!
再び振り下ろされた鎌で切り裂かれ、彼女は失神した。

こいつは、いつも・・・平気で死を見る。


「っあ―――――☆」
明るい声が夕焼けに響く。
「彼の魂も狩って、あの女の非合法な魂の蘇生の罪も裁いてっ!寿命も5年狩ってっ!さらに墓荒らしと殺人罪容疑であの人はムショ入り決定☆いっけーんらっくちゃく!?」
愛が超楽しそうに笑った。
すごく満足そうだ。
「・・・生き霊は?」
「あー。もーめんどいからいいや。手紙置いてきたし!」
にっこり愛は笑った。

「・・・・。」
マイカが怒り心頭の顔をして一つの紙切れを見下ろす。
「なんだこの――――――――――!!!」
すごい声で叫んだ。
手紙の内容を読み直す。
『マイカチョンへ☆
ごめんネ。見つかんなかった。つーか死んでたっ!ハハハΣ(^□^)
お墓は下に裏面に地図のせといたからっ☆
あ、名前は古川ケイタロウ。死因はひきにげだったらしいよ!
(あ。ちなみに犯人は捕まったみたいよ!)
バイビー!』
わなわな震える。
「ちょっとー!何これ超無責任じゃない!?ってか死んでるって何!?どうやって調べたってのよ!あん鬼ババ!」
「ま、マイカ?」
母が叫びに気づき部屋にやってくるが、お構いなし。
「今度あったらゆるさんけんねええええええええ!!!!」
こだました。

「・・・なんか聞こえたか?」
「きっのせいじゃなーい?」
愛がさらっと言う。
「けど・・・。これでもう生き霊になることもないっしょ。」
愛が振り向いて笑った。
「・・・?」
「よし、じゃ、次の街にむけてっいっくよ!」
愛が走り出す。夕焼けの空。
「早くお墓探そうね!」
「・・・何、馬鹿の一つ覚え?お前、最後いつもこんなんじゃんか。」
ぼそっと言う。
「はいはい早く来る!おいてくからね!」
ふわりと。
ふわりと空を駆ける。
死神と、遊霊。

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