Love Letter From Death 第4話  拍手へのお礼小説


「・・・か。・・・舞華っ。」
やさしい声がかかる。
扉が開く。
かえってくる返事は、寝息。
「あら・・・。」
母親はほほ笑んだ。
よっぽど疲れているのだろう。
昼寝をするだなんて。
「・・・おやすみ。」
母は戸を閉めてその場を去る。

しかし、その少女の目は。
しっかり開いていた。
そのことを母は知らない。


「ここらへん。」
愛が指をさした。
「ここらへんで生き霊がさわいでるらしいよーっ。」
「へぇ。」
その腕に、白い包帯がぐるぐるぐる。
「傷はもういいのか?」
緋憂が尋ねる。
「あ、うん。もうOKッ!」
笑って答える愛。
「死神でも血出るのな。」
「あー。契約してるからっ☆つーか、霊同士のぶつかり合いは血が出るよ?もち!あんさんもネっ。」
「ふーん。」
適当。
「そっけなー!!!せっかく教えてんのにぃー!」
「??あぁ??」
プンスカするところか?
「あ!」
 愛は突然下を見やった。
「今の子!」
歩道を歩く幼い少女を見て愛は叫ぶ。
「もしもーぉし!」
「?」
彼女はどこから声がかかっているのかわからないようだった。
きょろきょろとあたりを見渡す。
「こっちっスよ。おーい!こっち向いてちょーん!」
子馬鹿にしたような人の呼び方だ。
彼女は絶対にありえないと思いながらも、こわごわと顔をあげてみる。空を見てみる。
「?」
「そー。こっち!」
「!?」
「ちゃお☆元気ー?」
愛が手を振った。ただし、宙に浮いたまま。見下ろす形で。
「ひゃあああああああああ!!?!?!?!とッ!とんでる!?!!?!」
彼女は悲鳴を上げた。
でも怖い、というかなんというか、驚きで出た悲鳴だった。
「脅かすなよ。」
緋憂はぽつりとつっこんだ。
「ひゃあああああ?!!?」
彼女はパニクった。なぜなら明るい顔で笑って手を振る愛の肩越しに黒い髪の毛の無表情の男、緋憂の顔がのぞいていたから。
一番怖いポイントはそこだった。
「ちょっとお聞きしたいんですがぁ。あなた、死んでますー?」
愛がそう尋ねたが、彼女は聞いてないようだった。
目を点にさせて、半泣きのまま突然体を発光させた。
「あ゛っ!いけね!」
愛がやべー!という声を出す。
「?!」
少女の体はスウウっと光となり、分解されて一つの光の筋になった。
「あぁ!」
その筋は勢いよく、ひゅん!という音を出してその場から逃げだした。
「追うわよっ!緋憂!」
愛がとっさに胸元に手をやり、鎌を取り出した。
「なんで。」
理解できない。
「やっぱりあの子、生き霊だったの。光の先にあの子の器(カラダ)があるからよっ!会ったほうが話しつけやすでしょ!」
「だって、あの光、速いぞ。」
飛んで追いつく速さではなかった。
「ふふーんだ。」
愛はにっと笑って、鎌を構えた。
「カンケー、なし。」
ガチャ
「GO!」
そう愛が叫んだ瞬間。
彼女はすごい勢いで飛び出した。
まるで魔法のほうきのように鎌が高速で空を飛び、愛がそれにつかまり空を高速移動しているのだ。
「はっやーいぞ!」
あはは!と笑いながら愛は空を駆けた。
「!お!」
と、追いかけていた光の筋、もとい生き霊の魂はすうっとひとつの家の窓に入った。
「この家ね。」
愛はつぶやき鎌を少し強引に引き寄せた。
すると鎌の動きは止まり、愛もぴたりと止まった。
「よし。」
愛が意気込んだとき。
「『よし。』じゃねぇよ。」
すごい殺気を含んだ声が後ろからした。
「あら?」
おっと。彼の眼から怪しい光が見える。相当お怒りのご様子。
それもそのはず。愛は緋憂を鎌には乗せず(つかまらせず)一人で急発進したのだ。
ものすごい速さで進む愛を追いかけるのに、それ相応の無茶をした。
息切れと動悸が止まりません。
「でも、ま。こっからが仕事よー。」
愛は緋憂をとりあえずそっちのけにし、にやりと笑った。
そして不思議な呪文、唱えた。
その瞬間。
「あ!しまった!」
の声と共に、愛は落下した。
ドサグシャー
結構ひどい音がしました。
安否が気遣われる。
「なんで落ちるんだよ。」
緋優が空中に浮遊しながらつっこむ。
「浮いてらんないの。・・・忘れてた・・・・。」
痛そうな顔をしながらも笑顔で愛は言った。
「なんでだよ。」
にやりと笑って愛は立ち上がる。
「私。今、人間バージョンになってるからっ!ね!」
 いばる いばり いばれば いばれ。 パンパカパーン!
という効果音が似合うほど、彼女は威張った。
後ろに光が輝いているように見えるのは自分だけだろうか。緋優、自問。
――― 死神は人間になれるのか・・・
心の奥でつぶやいた。
そして。
――― 今の俺は?
緋優、自問。
結論。
――― 何にもなれやしない。


ピーンポーン!
インターフォン。不作法な鳴らし方で愛が鳴らす。
「はい?」
中から女性の声。
「あ、私、サイトウという者ですが。」
愛がそう言った。
斎藤なんて名字だったのか。
「舞華ですか?」
「あ、はい。その、マイカさん。いますかぁ?」
愛は笑ってそう言った。
あ、こいつハッタリだ。緋優がそれを理解するのに時間はかからない。
「ごめんなさい。今、寝てるみたいなの・・・。」
「え?・・・たぶんさっき窓から手を振ってくれてましたけど・・・・。」
「え?あ、そうですか・・・。じゃあ起きたんだわ。ごめんなさい。ちょっとだけ待っててください。」
やりとりうますぎだろ。なんだこの迷いのない嘘の連発は。詐欺師か。
緋優。こころのつっこみ。
「斎藤っていうのは偽名よ。」
愛が笑う。
わかってました。

ガチャ。
「お待たせしました。あら、ずいぶん大きなお友達なのね。」
「弟の同級生なんです。前に貸した漫画を返してもらいにきたんです。なんかうちの弟、自分でいくの恥ずかしいみたいでっ。」
ふふっと笑いながら愛が言う。
「それで面識ある私が。」
「あら。そうだったのー。ごめんなさいねわざわざ。電話くれたらマイカに行かせたのに・・・。」
「いえ。お構いなくっ。」
「二階へどうぞ。」
「はい。失礼しますっ。」
なんという。
考えていたのかと思うようなセリフ回し。
呆れている緋優をよそに、愛は二階へあがった。

「おす!」
友達に声をかける気軽〜なかんじで愛はマイカの部屋に入った。
ノックなし。
「え?」
マイカがくるっと振り向いた。
そして一瞬で驚きの色に顔が染まる。
「っ・・・・・・・!?」
声にならないらしい。
「夢の中のおにばばぁ!」
叫んだ。
ちなみに緋優は見えていない。
「こらこら。」
にこっと笑いながらも握りしめるこぶし。
このやろう。
のオーラが放たれている。
「まぁ、正当な感想だな。」
緋優がつぶやくと、愛がにらんだ。すごい形相だ。
一時、しっちゃかめっちゃかになった。
少し間をおいて。落ち着きを取り戻したマイカが正坐(させられて)した。
「何のようよー。」
意外と冷静だ。
「殺す気ぃ?」
生意気な口調で、フンと鼻を鳴らした。ずぶとい神経の持ち主のようだ。
「ちっくいちムカつくガキねぇ!」
愛も憤慨。あぁ。なんかこの二人似てる。
「マイカ・・・。」
「な、なによ。」
愛がいきなり真顔でマイカの顔を覗き込む。
「恨んでる人とか、いるの?」
「・・・えぇ?いない・・・けど。なにそれ!」
ズザ!
どんびいた。
「はは・・・。じゃあ。さっき寝てた時、何の夢見てた?」
「え?」
マイカは一瞬うつむいて考えた。
「・・・。えっと。助けてくれた男の子を探しに行く夢。・・・私さぁ、前。近所の川でおぼれて、助けられたの。なんか、たぶんそのあたりに住んでる人に。」
「知らない人?」
「うん。お礼するって約束して。でもその時、連絡先聞き忘れちゃって・・・。だから、最近ずっと探してるの。なんか、最近夢でも探すくらい。探してるんだけど。」
マイカはため息をついた。
「見つからないのよ・・・。って。何。それが何?」
「・・・・・・・・・・。」
愛は何かを考えているようだった。


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