Love Letter From Death 第3話  拍手へのお礼小説


「ゴーストぉ?」
愛が怪訝な顔をした。
はぁ?と、言わんばかりの顔で。
「何、いきなし。それがなんだっての。」
「俺って、ゴーストにはなれないって言ってたろ?そのゴーストって?」
想像するのは映画の『ゴースト』とか、貞子だ。
「あー。アレね。そんなののならなくていいの。」
いい放つ。
「だから、ゴーストってなんだよ。」
説明しろ。っつーの。
「ひゆーって、何も知らないのね。」
はぁやれやれ、と愛は言って溜息。
―――最近まで生きていた俺が死神の世界を知っててたまるか。
心の中で、めっちゃつっこみましたとも。
殴ったろか。とも思いました。
「えーっとね。」
説明が始まる。
「死人から抜けて出てきた魂は、死神に狩られて、その後、その先のこと、つまり進路ね。を決めるの。これも私の仕事。」
進路?
「道はいろいろ。まず、緋憂のような。」
指をさす。
「行き場も何もない。逆にやっかいなふわふわ飛んでる『遊霊』(ユウレイ)。不可抗力でそれになるか。」
指を立てる。
「『悪霊』『自縛霊』『背後霊』『守護霊』など。転生しないで地に残る念のカタマリになるか。あ、これをまとめてゴーストっていうの。わかった?」
もうひとつ。指を立てる。
「それから、一番オーソドックスなのが、転生の道。そして・・・」
指を立てるのをやめて、ぐっと掌を握る。
「死神・・・とかね。」
その表情に緋憂はドキっとした。
殺気というか。憂いというか。なんともいえない空気になった。
「お前って、死んでるんだ。」
やっぱり、と。思った。
だってあのプレートは、死者のものだと思ったから。死者のIDみたいなものだと考えていたから。
「うん。」
愛は隠すことなくうなずいた。
だけど、その瞬間。

「あッ!」

「?」

すごい勢いで、愛の背後から、何かが向かってきていた。
「悪霊!!!!!!!!!!」
振り向こうとしたときには。
「しまっ・・・!」
遅かったらしい。
その人なのか、煙なのか、光なのかわからない存在は、無言のまま愛の腕をつかんだ。
「うあ゛!」
じゅっという音がする。愛の腕から謎の瘴気が出る。
愛はひるんだが、一瞬で立て直し、無理やり腕を引き抜いた。
「・・・・・・っの!」
すかさず胸元のクロスから、鎌を引きずり出す。
そしてギュン!という風を切る音とともに、その大鎌を振り回し、ズパっとその得体の知れないものに刃をくいこませた。
それはひどい叫び声とともに、二つに裂けた。
「!」
耳を覆いたくなる声だった。耳鳴りがする。鳥肌が立つ。
「っ!」
愛は息を荒げてたが、少しよろめいただけで立て直し、鎌を消した。
―――悪霊が・・・・。突然でて・・・きた・・・?・・・なんで!?
愛は混乱していた。
本来悪霊なんてものは、好んで死神を襲ってきたりしない。
悪霊にとって死神とは、恐れるものであるからだ。
ただし、死神にとっても悪霊は恐れるものだった。
「平気か・・・?」
緋憂は愛に近づいて問う。
「・・・うん。怖かったでしょ・・・。悪霊。・・・大丈夫?」
汗を落としながら言った。
「いや・・・平気だ。」
「うん・・・そか。」
愛は汗をぬぐった。
「悪霊って、死神が殺すものなの。これも、仕事なんだ・・・。」
愛の異変を緋憂は見逃さなかった。
なんか、変だ。
「どうしたん・・・・」
「ううん。」
首を振る。
「ちょっと怖かっただけっ☆」
そして明るく言い切った。笑った。
「あーゆー、影みたいな形の悪霊って、もう壊れちゃってるから。もう力づくで殺すしかないんだよね・・・。だから死神って結構バトルっていうか・・・」
「・・・なぁ。」
緋憂が一歩近寄る。
愛は一歩下がった。
「何っ?」
笑っているが、この顔は。何かを隠してる。
「もう、説明はいいでしょ。早くいこ?」
歩き出そうとする。だけどその時、空から地球に向かって赤い血が落ちたのを見た。
「おい・・・っ!」
腕を見る。さっきの腕だ。
やけどのような、ただれた傷跡がそこにあった。血が出てる。
「その腕・・・!」
「あ!」
とっさに腕をつかんだ。
その瞬間に。
「いい!」
パシ!
振り払われた。
 
まただ。


「・・・・・あ。」
愛が足元を見た。
「なんだこのクモ・・・?」
足元に黒いクモがいた。見たこともない形だ。
「あ・・・ああ、これ?」
愛は平然とそれを見やった。
気持ち悪がったりはしない。
「指令の紙を運ぶクモよ。最初はきもかったけど、慣れりゃ・・・ヘーキ★」
クモはその尻部から糸を出し、どんどん紙きれのようなものを紡ぎだしていた。
妙な光景だ。普通のクモはこんな糸を出したりしない。
「へぇ・・・。」
確かにきもい。
「毎度毎度、今度は何よ?って感じッ?」
愛は笑って言った。
そしてクモが作り終えた、紙を拾い上げた。
「ギャフン!」
愛がそれを手に取り、読むなりそう言った。
いまどきギャフンとかいう人がいるのだろうか。
「なんだよ・・・?」
「い・・生き霊ぉぉぉおお???」
頭を抱えた。紙は地面に落ちる。
「え?」
ひらひら落ちる。
「久々の指令がこれかよぉ・・・ッ!はぁ〜〜〜〜・・・・・。」
その紙の上にボタっっと赤い血が落ちる。

愛の嘘のような明るさと。
黒ずんでいく血のしみが。
違和感。

 ■4へ■up

もくじイントロ
on***の世界とリンク!

拍手で続き

 

 

inserted by FC2 system