27,
暗い森の奥に、たどりついた。
もうすっかり夜だ。
頭ががんがんしている。まだ爆音が頭の中では続いている。

「殺してやる・・・っ。」
クシスは呟いた。
私は振り向いた。
彼は膝をついて土に触れ、拳を握り閉めていた。
13歳の最大限の憎しみが彼を取り巻いている。
震えてる。
憎悪で、身体が震えてる。
その目に、いつもの優雅な笑みとは違うものがみえる。
溜まった涙が見える。
ぼとぼと落ちている。
口元がゆがんでいる。
嗚咽を噛み殺した表情だ。
「殺してやる・・・っイルルの連中・・・いつか絶対殺してやる・・・!」
低い声で、唸るように彼はそう吐きだした。
手を伸ばした。
そしてぎゅっと抱きしめた。
まだ細い13歳の体を抱きしめた。
小さな拒否が体に当たるが、無視をした。
「なんでだよ!」
彼は叫んだ。かすれる声で。
「なんで泣かない!」
どすっと、小さな拳が肩に当たる。
それでもクシスを放さなかった。
自分の腕の中にしまいこんで放さなかった。
「なんで笑ってるんだよ!」
そう叫んだクシスは大声で泣き出した。その彼を、ずっと、抱きしめ続けた。

その一ヵ月後に、アルブ戦争は終わった。
それは形式的に。
人々の憎しみはそのままで。
悲しい話はそのままで。


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