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「近頃アルブとイルルで貴族達の諍いが起こってるらしいわよ。」
「へぇ?」
休憩中、元仕事仲間のマリーと一緒に御飯を食べていた。
「なにそれ?」
「アルブ南部とイルル東ね。正しくは。アルブ南部の最高権威のギロディス侯爵がイルルに手を出したらしいのよね。」
「・・・ギロ?あの髭のおっさん?」
「そうそう。それで、結構すったもんだになってるらしいわよ南部は。」
「・・・南部・・・全部?」
「え?」
「サリーナ・マハリンも?」
「え、わ、わかんないけど。多分そうなんじゃないの?一番イルルに近いし。」
「・・・その諍い、ひどいのか?」
「さぁ・・・?なんせ私字読めないし、新聞・・・出てるとしても、詳しく知らないなぁ。」
「・・・ありがとう。」
立ち上がった。
「え、ちょっと、スザンナ!?」
走り出して、一番近くの新聞屋に飛び込んだ。
「おじさんっ今日の新聞は!?」
「おうおう、どうしたんだ慌てて。」
おじさんは新聞を手に取って言った。
「ありがとう。」
コインを置いてすぐに店を出て新聞を開く。文字は読めるほうだ。
「アルブ・・・アルブ・・・。」
字を追う。
「・・!これだ。」
必死に文字を読む。字を読むことは何とかできるけれど読むのに時間は掛かる。

「そわそわしてる。」
「え?」
「どうしたんだ?」
同じ警備仲間のビドーが問いかけてきた。
「や、べつにそわそわしてるわけじゃないんだ。」
「してるぞ?」
「・・な、ビドー、アルブ南部の諍いのこと知ってるか?」
「あぁ、貴族たちの権力争いだろ。」
「あれって、ひどいのか?新聞じゃ、よくわからなかったんだ。」
「俺も知らないよ。でも多分それなりにひどくなってるんじゃないかな。」
「どうして?」
「どうしてって、彼らの権力争いは、爆発こそ今の今までしなかったけれど、五年くらい前から続いてる。ギロディス侯爵とカザンブール公爵を中心にね。」
「五年。」
「それが爆発したんだ。南部とはいえアルブは武民の地方だからね。剣を取るだろう。戦いが始まってしまえばどっちかが倒れるまで止まるもんじゃないよ。」
「・・・どっちかが。」
「アルブ南部の貴族たちも巻き込んで戦争が大きなものになるのは。時間の問題だろうね。」
「・・・・。」
ざわめいた。心臓が。


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