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「帰るのか?」
「うん?うん。帰るよ。やばい、このままじゃ帰っても五時間くらいしか寝れないんだ。」
「送ろう。」
「いい、いい。歩いて帰れる。」
「だが此処から結構遠いだろ。」
「うん、まぁ。でも大丈夫。」
フェレスは行こうとする私を通さなかった。
「泊まってけ。」
「それは、出来ない。」
「何故?」
「迷惑だから。」
「迷惑じゃない。」
「こんなところで寝れない。目がちかちかする。」
「じゃあ灯りを消せばいい。」
強情。
「あのさぁ。」
「スザンナ。」
「なに。」
「俺、明日、帰るんだ。」
「あ、明日なんだ。」
「だから今日くらい、一緒にいて。」
「・・・なに?またおおっぴらに誘ってる?」
「そういう意味じゃない。」
あ、違うんだ。
「・・・分かった。」
私は微笑んだ。
「しかたない、孤独な少年フェレス君のために私が一つ御伽噺でもしてあげましょう。」
「そういうのは要らない。」
「あははっ!」

「じゃあ、生活には困ってないんだな。」
「困ってないよ。そりゃ毎朝2時間弱かけてアルブまで出てくるのは大変だけど、運び屋のおっちゃんに出会った時は乗せてもらえるし、対して苦しい思いしてない。おかげさまで。」
「・・・それは良かった。」
「フェレスは?もう変な賊に襲われるような事、一度もない?」
「最近はない。昔は何度かあったが。」
「良かった。もう私を護衛にする必要がなくてっ。」
「・・・スザンナ。」
「うん?」
「俺の・・・。護衛になってくれないか?」
「・・・・・・えぇ?」
笑った。
「また今のが信用おけない護衛なのか?」
「おいている。だけど・・・。」
「フェレス。」
フェレスの顔を見る。
「私・・・多分、ムリだ。」
「無理?」
「フェレスの護衛・・・出来ない。」
「・・・もう鈍ったのか?」
「そういうんじゃないよ。」
微笑んだ。
「・・・無理には言わない。」
「ありがとう。また会おうなフェレス。今度こそちゃんと訪ねる。」
「あぁ。俺も、この辺りに来る時は顔をみせるよ。」
「ピティの周辺の護衛か、腕だめしに出てるよ。」
「・・・腕試し。そう言えば今日も出てたな。」
「うん。賞金結構いいし。」
「危ない。」
「あ、なめてる?私、武民。生粋の。」
「・・・あぁ。そうだった。」
フェレスと手を繋いで、空を見た。
いつか、墓の前でこうやって繋いでいた。
「フェレス。」
「なに?」
「私いつも笑って生きるよ。」
「あぁ。そうしてくれ。」
フェレスの事が、とても大切だと思った。
悲しい事なんてなかったらいい。
こんなに美しいんだから、世界は喜びで、笑顔で溢れていたらしい。

だけどそんな願い裏腹に。アルブ戦争は起こった。


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