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「ブロイニュか・・・。」
呟く。
魔女の町だ。
本当かどうか知らないが、魔女と武民はあんまり仲がいい方じゃない。
一ヶ月たった。
フェレスとの約束の日まであと少し。結構早くに着いてしまったな。
のんびりと風を感じて空を見る事が好きだった。
ブロイニュは豊かな丘陵地だ。
町からすこし外れれば青が拡がっている。
森もたくさんある。
その森の奥に魔女たちの小さな集落がいくつかあるらしい。
口笛をふいた。
有名な戯曲の一曲だ。
悲劇の一曲だ。
悲しい物なんて嫌いだった。
たくさんの美しい、楽しいもので世界が溢れればいい。
なぜ皆がそれを望まないのかわからない。
なぜ絶望が生まれるのか分からない。
こんなに世界は美しいのに。広いのに。
「・・・アングランドファウストの護衛だな。」
「え?」
振り向いた。
そこにごつく、厳つい顔をした男が立っていた。
それを認識した瞬間に刃が振り下ろされた。
大きな鉞だ。
瞬発的によける。
剣をすらりと抜く。
この剣を抜く音が好きだった。
抜いた瞬間にからだに走る緊張。
「誰だ!」
「大人しく地獄へ落ちろ。」
「やなこった。」
男はもう一度巨大な鉞を振り上げて、私を狙って一撃を振り落とす。
飛んで交わす。
すごい椀力だな。
感心する。
こんな大きなエモノで、これだけ自由に戦える。
剣を握る。汗が滲む。
だけど体をこしょばすなにかの快感。
戦う事が好きだ。
アルブの好戦的な血が騒ぐのだ。
心底、私はアルブの女だな。
思った。
腕を振る。
鋼がぶつかり合う音がする。
重い。
相手のエモノの重量感が伝わる。
「何を笑う。」
「あ、悪い悪い。」
おっと。また勝手に顔が笑ってたらしい。
戦っているといつもこうだ。
なにも自分に余裕があるわけじゃない。
自分はまだまだ未熟だ。分かってる。
12歳の発達段階の筋肉の弱さも、小さな体も、大人の武民には敵いやしないことも。
だけど、心音が高鳴るのだ。
剣を持つと。
戦うと。
死に向かいあって、楽しむのは変態くらいだ。
そういう理屈があるのなら、私はその変態の一だろう。
ドゴっ!
左足のかかとが相手の顔面に入る。
相手はうめく。
その隙は逃がさない。剣を振り回す。
「!」
ずばっと、肉を切った。
相手は叫んでいた。
血が軽く吹きかかる。
「うぅ!」
足を止める。
体を止める。
相手を見る。
自分の息は上がってる。
「で?」
問う。
「何の用?」
男はこちらを睨む。
激痛で歪んだ顔だ。


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