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「スザンナ。」
町を出る前に、フェレスに挨拶をしようと思って学舎の門の前で待っていたら、フェレスの声がした。
「フェレス。」
「どうしたんだ。」
「うん。もうここを発とうと思って。」
「・・・そうか。」
フェレスは馬車の上から私を見下ろしていた。
「うん。また会えたらいいなっ。」
「・・・あぁ。」
「じゃ、またなっ。」
手を振ろうとした時だった。その手が掬い取られた。
「スザンナ。」
「うん?」
「お前は本当にいつも笑顔だな。」
「あはは。そうか?よく言われる。」
「いつまで旅を続けるんだ?」
「うーん。あと一ヵ月半かな。そしたら、アルブに帰るよ。」
「一ヵ月後。」
「うん?」
「俺は都に行く。」
「うん。」
「お前、俺の護衛をしてくれないか。」
フェレスの目の色は、不思議なエメラルドグリーンだった。その目に吸い込まれそうだ。
「護衛?」
「あぁ・・・信用できるものを側におきたい。旅の間だけでいい。」
「今の護衛は信用をおけないのか?」
「おいている。だけど、その旅の時だけは、いつもとは違う護衛なんだ。」
「・・・・・・・へー。」
護衛に随分こだわるんだな。そう思った。
「何処から?」
「ブロイニュから。」
「見返りは?」
「十分。」
「・・・いいよ。」
微笑んで頷いた。フェレスは無表情のままありがとうと言った。
「じゃあ、一ヶ月後、ブロイニュの塔の下で会おう。」
「うん。」
「じゃあな。」
「うん。フェレス。」
フェレスは私の手を離して馬車を前に走らせた。
フェレスが掴んでいた自分の指が妙に温かい。
嬉しくて、一人、微笑んでしまった。
フェレスが自分に信用をおいていると言ってくれた事が、すごく嬉しかったんだ。


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