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その夜も、フェレスは夕食に自分を招いた。
「母親の病気はなんなんだ?」
「え?」
と、訊かれても。病名なんて、分からない。
「・・・え・・・っと。」
首をかしげる。
「わかんない・・・。でも先生は身体の中に、悪いものがあるんだって言ってたぞ。」
「・・・腹か?」
「胸かな。時々すごい咳き込むんだ。」
「・・・肺か。」
「はい?」
「いや。それを治すための薬は、飲んでるのか?」
「・・・薬は・・・。」
熱いスープを口に運んで言う。
「・・・薬は買えないんだ。」
「何故。」
「・・・薬は高いから。」
「・・・俺が買って贈ろうか。」
「いい。」
すぐに断った。
「いいよ、フェレス。そんなことは、フェレスには頼めない。それに、先生が言うには完全に治す薬はないんだそうだ。」
微笑む。
「ありがとうフェレス。」
「・・・いや。」
嬉しかった。
フェレスがそう言ってくれたこと。
でも、これ以上フェレスに甘えるのは、どうしても気が引けた。
「じゃあ、俺がその薬を作る。」
「・・・え?」
「ここで学んでるのは言語学だが、都の学舎にも行って薬学を学ぶつもりなんだ。」
「・・・。」
「俺が作って、それからスザンナの母親に飲ませる。これならいいか?」
「・・・でも。」
「勘違いするな。贈るわけじゃない。実験させてもらうだけだ。これなら、いいだろう?」
笑いが込みあげた。
「あははっ・・・フェレス、お前、私の母親実験台にして薬、試そうって言うのか?」
「あぁ。」
「いいよっ・・・。いい、いい。その話、乗った。」
「待っててくれ。」
フェレスが私の顔を見た。
「いつか、薬を持ってお前の故郷に行くから。」
「うん。待ってるよ。」


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