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「え?」
「ここに泊まっていけばいい。部屋なら用意させる。」
「・・・・・あ、いや、いいよ。」
断った。
「宿を取ったのか?」
「ううん。でも大丈夫。」
「今から探すのか?遅いだろう。」
「野宿するから。いいよ。そんなにお金がないんだ。」
「だったらここに留まればいいじゃないか。」
首を振る。
「それじゃ修行にならないから。」
「・・・・そうか。」
「ありがとうフェレス。お前、優しいな。」
「・・・。明日どこかへ発つのか?」
「うーん。考え中だよ。寝ながら考える。」
「もし。」
「うん?」
「もし時間があるなら明日もう一度学舎へ来たらいい。」
「・・・塀から?」
「正面から。話は付けておくから。」
「なんで?」
「見せたいものがある。」
「・・・そいつは楽しみだなっ。」

フェレスが門の所で待っていた。
「着て。」
手渡される。
「なんだこれ?」
「もう少しましな格好をしないと、目を引くから。それじゃ。」
「・・・これじゃ、ダメなのか?」
自分の服を指差す。
「ダメなわけじゃないけど、目立つ。」
「じゃあこれでいいよ。」
「・・・じゃあせめて、剣。剣だけは預けて。」
「あぁ、ここ武装してたら入れないんだ。」
「そんなところだ。」
フェレスの後について歩く。フェレスの綺麗な色の髪を見つめて歩く。
さらさらだな。
ふふっと笑った。
「で?見せたい物ってなに?」
「これ。」
ある部屋に着いてフェレスは言った。
その部屋には中央に見たこともない大きな球体が置かれてあって、壁中ぎっしりと大きな紙がいくつも硝子のケースの中に展示されていた。
部屋の一番奥に一番大きな紙が貼ってあった。
「なにこれ。」
「今の所、最も精密な地図だよ。」
「・・・・・・・・・・へぇー。」
地図。
確かに。その紙には何かの図形が書いてあった。
「・・・これ、私たちの国か?」
「そう。」
指をさす。
「これが、アルブ。」
「・・・・アルブ。結構大きいんだな。」
「そうだな。それからここが、サリーナ・マハリン。」
「うんうん。」
「お前の家は?」
フェレスはくるりとこっちを見て問う。
「えぇ・・・・?」
じっと地図を見る。全く想像がつかない。
「・・・ピティは?どこ?」
「ここ。ここがアルブの町。」
「えーっと。アルブから、西に行って・・・。」
ぶつぶつ頭の中で必死に道を思い描く。
「ここらへん?」
指で刺してみる。
「・・・ずいぶん山の方なんだな。北だ。」
「あ、うん。私の村はすごくちっさいからさ。殆んど山のふもとだよ。」
「・・・へぇ。名前は?」
「バルガン。」
思い出す。
故郷の風を思い出す。
口元が緩む。
じいさんは元気でいるだろうか。母親は?
「好きなんだな。」
「え?」
「その、バルガンという村を。」
「あ・・・うん。すごくいい所だ、と自分では思ってる。」
「・・・いつか。」
「ん?」
「いつか行ってみたい。」
私の頬はほころんだ。
「もちろん。いつでも来てくれ。目玉焼き、作ってやるぞ。」


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