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「ここか。」
学舎。
この国にある全部で5つの学び舎。大学のことだった。
しかし、でかかった。
その学舎とやらは。
とても入れそうにない。
というか、入れても、会えそうにない。
諦めなければならないんだろうか。
ふとそう思った時に名案が浮かぶ。
「そっか。フェレスに会いたいから、って頼めばいいんだ。」
新聞に載るくらいの有名人だ。
きっと探してもらう事は出来る。
となれば簡単だ。
この高い塀を飛び越えて中に入ってしまえば終いだ。
跳躍には自信があった。木登りにも。
だから簡単に塀を越える事は出来た。
だけど着地に失敗した。
何かに思いっきりひっかかってしまい、服が破れて体勢を崩し、よろめいて手をついてしまった。
「いった・・・っ。」
結構やんちゃだったと思う。
手をすりむいた。
けど問題はそれからだった。
顔を上げると、幾人もの眼が向けられていた。
彼らの服や格好は、それぞれ煌びやかで、どうみても自分はここに場違いだと分かる。
笑ってごまかせそうにもない。
―――やばい!
思った瞬間に走り出して逃げていた。
もちろん衛兵に追われる破目になる。
浅はかな計画だった。
頭に塩が足りないなと思うときがあるのはそれまでにも多々あったけど・・・。
「まっずいなっ!」
走りぬけて追っ手をまいて、広い講堂のような場所に飛び込んだ。
誰もいない。
好都合だ。暫らく此処で隠れておこう。
フェレスを探してる場合ではない。心臓がドキドキしている。
はは、と何だか面白くて笑えた。
だけどつかの間。
ガタンと音がして、人が入ってきた。
「うわ!」
見つかった。
衛兵たちも多分そこに私がいると思ってなかったんだろう、一瞬驚いたが、捕らえろ!と言う誰かの声と共に一斉に自分に向かってきた。
これはダメだ。袋小路だ。
諦めた時だった。
「待った。」
知らない声がした。
全員が振り向いて止まった。
「待った。この人は私の知りあいです。」
「・・・・誰だ?」
私は知らない。
「私が外まで連れて行きます。だから下がってください。」
「・・・・・・・・は・・・はい!」
どういうわけか全員がその男の言う事を聞いた。
絶対まだガキなのに。
誰もいなくなって、そいつと二人になった。
「・・・全く。いい度胸だな。」
「だ・・・誰だよ。お前。」
そいつがこっちをじっと見る。
「憶えてないのか?」
「・・・・・・・・。もしかして、フェレス?」
「良かった。忘れられてたら助けた甲斐がない。」
「って。えぇ?!お前、フェレス?!」
驚いた。
無理もないだろう。
だって、この間会った時は自分より背が小さくて、絶対にまだ子どもに見えたのに。
どういう魔法を使ったのかしらないが、背が随分伸びて声が変わっていた。
「なんで?魔女に何かして貰ったのか?おかしいぞこの成長!」
「おおよそ一年もたてばこれくらい変わるよ。」
言ってのけられる。
「えっ。じゃあ、私も変わったか?」
「いや、スザンナは変わらない。」
「・・・・あっそ。」
がっかりした。
「何してるんだ。ここで。」
「あ・・・っそうだ。いや、何もしてないんだけど。ちょっと、お前に会えたらなって思っただけなんだ。」
笑ってみせる。
フェレスは表情を変えずに黙ったままこっちを見てた。
「新聞でさ。此処に来てるって知ったから。会えるかなって思ったんだけど、あはは、思ったよりすぐ会えたな。」
「・・・・・そうか。」
相変わらず笑わない。
「・・・お前、なんだその服は。」
「・・え?あぁ、ちょっと入る時に破れちゃったんだ。ちょっとみっともないな。」
「・・・お前、本当に女か。」
「女だよ。失礼だな。ちゃんと月経もきます。」
「・・・・・・・・・・・・絶対女じゃない。」
「なんだよ。」
フェレスはため息をついて、自分の上着を脱いだ。
「着て。」
「あ、ありがとう。」
それを受け取って着てみる。
ぶかぶかだった。なんだか嬉しかった。
「な。お前。男っぽくなったな。」
「スザンナは本当に全然変わらないな。」
フェレスに、すごく、心の奥から会えて嬉しかった。


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