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旅を続けた。
旅をするということは想像していたよりも随分きついことだった。
この国は物騒で、野盗やら、なんやら、ゴロツキがたくさんうろついていた。
多分、職を失ったやつらが集まってそんなことをしているんだと、じいさんが言っていた。
それは国の政治が悪いせいだと言っていた。
「よっこいしょ。」
拾った新聞を手に取り、ランプに火を付けて座りこんだ。
今日は野宿になる。
この頃の新聞なんてのは、一つも大したことなかった。
印刷機の性能が悪いし、誤字脱字なんてのは日常茶飯事。絵も入っていない。
「・・・・・・お。」
目に留まる記事がひとつ。
「これ。」
ランプに近寄ってみる。
「やっぱり!フェレスだ!」
心が少し躍った。
記事によると、フェレスは明日からこの町で暫らく学舎に入って言語学を学ぶらしかった。
「この町?」
心が躍る。
懐かしいな。フェレス。ちっとも笑わない変な貴族。
旅を始めてから、初めて出会った人間だった。
自分のことは憶えているだろうか。
会えるかな。
無意識に会いたいと思っていた。
それはお礼が欲しいからとかそんなんではなく、知り合いに会いたい、知ってる人間に会いたい、ただそれだけだった。
一人で旅を続けることはすなわち、話相手がいないことにしばしば苦しめられる。
喋れないということは、結構ストレスなんだ。
「学舎か。明日行ってみようかな。」
独り言で微笑んで、その日はうきうきした気分で床についたもんだった。


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