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「アングランドファウスト?」
聞き返す。
「あぁ、フェレス、あんたアングランドファウスト伯爵の息子なんだ?」
「あぁ。」
「ははっ、私貴族と話すの初めてだ。」
「・・・だろうね。」
フェレスは少し呆れて言った。
フェレスは出会った頃からずっとこんな調子だった。
低いテンションというか、気高くて近寄りがたいオーラを出しているというか。
だけど、優しさのある知的な目をしていて、不思議な感じだった。
「じゃあさ。将来の伯爵だったりするの?」
「・・・あぁ。」
「へぇ。大変だねぇ。」
「大変?」
「だってそうだろ?いろいろ面倒くさいことやんないといけないし、人々にはいつも見られてるし。」
「・・・お前。」
ふっとフェレスがいきなり笑った。正しくはため息交じりに息をついた。
「面白いこと言うんだな。」
「面白い?」
「民なら貴族のことを羨ましがるんだと思ってた。」
「あぁ。お金のこと?」
はは、と笑う。
「お金なんかあってもさ。無駄に使うだけじゃないか。」
「・・・・無駄?」
「だって私は生きる事ができるくらいのお金で満足だ。煌びやかなドレスなんて要らないし。食事も自分で作れる。」
「・・・そうか。」
「なんなら今度作ってやるぞ。私の目玉焼きはおいしいって評判なんだ。」
「・・・へぇ。それは何だ?」

サリーナ・マハリンには、直に着いた。

「此処か?」
「あぁ。」
「・・・へぇー。」
感心した。
大きな御屋敷だ。
こんな大きくて城みたいなのが、都以外にもあったんだ。
「フェレス様!」
着くなり何人もの兵(みたいな人)がフェレスを囲って無事を喜んだ。
それもそのはずだ。馬車ならばとっくの昔についている時間だった。
なんだか微笑ましかった。
本当に皆が安心した顔をしていたから。
きっと、フェレスは慕われているんだな、と思った。
「・・・じゃ。」
去ろうとした時。
「スザンナ!」
彼は初めて私の名前を呼んだ。
「・・・なんだ?」
「お礼をしてない。」
「・・・あぁ、見返りのことか、いいよ。あれくらい。私もこっちの方に来たかったんだ。話相手ができて楽しかった。」
私は微笑んだが、相変わらずフェレスは微笑まなかった。
「ならば・・・、次。」
「ん?」
「次に会った時に、なにかを贈ろう。」
「あ、本当に?そいつは嬉しい。」
今度こそ手を振って去ろうとしたら、またフェレスは私を止めた。
「スザンナ。」
「なんだよ。」
「助けてくれてありがとう。」
彼は優しい声でそう言った。
だからなんだか胸がくすぐったくて、思いっきり笑って返した。

フェレスとは、これが初めての出会いだった。
確かお互いに、12の時だったと思う。


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