81,
気が変わったら此処に来てくれ、といって彼は住所を書きおきして行った。
「・・・・・・・・・セツ?」
「なに?」
暗闇の中僕はセツに声を掛けた。まだ起きてた。
「・・・今日の。」
「あれは無しだ。」
「うん。でも、あのね。」
「なに?」
僕は拳を握る。
「彼、貴族が来るって言ってたでしょう。」
「言ってた。」
ごくんと飲み込む。
「お願いがあるんだ。」
「スピカもお願いか。」
「うん。」
起き上がって正座をした。セツはゆっくりとこちらを見た。
「・・・なに?」
「あのコンチェルト・・・出てくれないか?」
「・・・・・・・・スピカまで何言いだすんだ。」
「む・・・無理なこと言ってるの、分かってるんだ。」
セツは僕をじっと見てた。消えかけた火の灯りで顔が赤く見える。
「・・・それ、スピカの探し物に関係あるのか?」
ごくん。
言わないと、云わないと。僕は情報を何も漏らさずに人に頼ってる。フェアじゃない。          

だけど何処まで?何を言えばいい?全部は言えない。いえない。
「・・・・・目立ちたくないんだ。」
セツが呟いた。
「わ、分かってる・・・。」
言わなくては。でないと、頭を下げる権利すら僕は持っていない。
「・・・・・・・・・考えとく。」
セツは目をそむけ、ごろんと横になった。
僕は拳がひとりでに緩んだのを感じた。
「セツ。」
セツはもう答えなかった。

ばか。僕の、莫迦。
なんて甘えた餓鬼なんだろう。




82,
「嬉しかったんだろ?」
「なにが。」
「コンチェルトに出てって言われたこと。」
「・・・無理だ。」
ため息。
「でも、君のピアノを認めてくれたことには変わりない。」
「・・・そうだな。」
認めた。
「だけど・・・こんなものは、ピアノではないよ。」
「セツのピアノだ。」
彼は微笑んだ。
「君だって本当は好きなはずだ。君のピアノ。」
「・・・・どうかな。」
「楽しいだろ。」
「ピアノは、好きだ。」
「うん。見ていたら分かる。」
彼はピアノに触れた。
「ピアノを尊敬しているし、君は音が好きだ。」
「・・・あぁ。」
この音が好きだ。ポンと鳴らして見る。
「出なよ。コンチェルト。」
「・・・出れるんなら、出たいよ。」
「素直。」
「でも、目立ちたくない。」
「・・・それは、リアリズムに?」
頷く。
「ならば君とばれない形で出ればいい。ねぇ聴かせてやりなよ。君のピアノ。めちゃくちゃだけど、芯のある。
めちゃくちゃだけど、愛しい音を。」
「・・・・・・・褒めてる?けなしてる?」
「あはは。ほら、あの子も。あの子のためにも。」


83,
「え?」
「いいよ。出ても。」
青年は立ち上がった。
「ありがとう!」
がしっとセツの手を握った。
「ありがとう!ありがとう!本当に!」


ここまで喜ぶなんて、考えてなかったらしく、セツはたじろいだ。
僕は恥じた心をぶら下げて、下を向いた。
「一つ条件がある。」
「ん?」
「俺が、誰だか分からないようにして欲しい。できるだけ目立ちたくないんだ。」           
 *
「あんなところでスカウトされるようなピアノを弾いてたのに?」
くすっと彼はわらった。
「うん。分かった。任せて。」
「・・・それから。弾く曲は、一曲だ。」
「悲愴?」
「・・・知ってるのか?」
セツは驚いてた。
「うん。知ってる。ベートーヴェンだね。」
「・・・・・・・あんた。」
「僕の名前はラファル。ヴァイオリン弾きだ。君は?」
「・・・セツ。」
二人は握手をした。

セツは部屋に通された。彼の家の中。
「・・・ピアノ。」
「古いんだけどね。」
ラファルは笑った。
「使って。練習していいから。」
「・・・ありがとう。」
「こちらが。」
にこっと笑って出ていった。
セツがくるりと振り向いて僕を見た。僕はドキッとした。
「って訳で、練習しないといけないから、スピカ。」
「うん。」
「スピカは自分のことやってきなよ。」
「・・・・・ううん。」
首を振る。
「僕ももう此処ではやることが無いんだ。此処にいる。」
「・・・・恥ずかしいんだけど。」
「いいよ。僕は聴いてたい。」
セツはため息をついて椅子に座った。そして腕をかまえる。


84,
「あの子は。君に少し似てるね。」
「・・・誰。」


「鍵だよ。」
「・・・どこが?」
「卑怯なところだよ。」
セツは舌打ちをした。
「弾かないの?」
「弾かない。」
セツは窓の所に立ち外を見た。
「どう?少し変わったと思わない?」
「うん。見ないうちに大分外が変わった。」
頷く。
「綺麗な空だね。」
「・・・そうだな。」
白い薄い雲が空を、薄い水色にしている。沈黙。
「あの子の探し物のこと、あの子の秘密。訊きなよ。」
「・・・・。」
「なんで訊かない?優しさのつもりか?それも自分がして欲しいから他人にもそうするのか?」
「・・・厳しいな。」
「だって、鍵が鍵として動かないままじゃ、君の成長が意味のないものになってしまう。僕はそれが最も不愉
快だ。」
「そう。」
「君たちは一緒にいるだけじゃダメなんだ。」
「・・・どういう意味。」
「人間らしく触れ合えよ。時には攻撃しろ。時に慰められて、時に甘えるんだ。」


85,
はっとした。転寝をしていたらしい。
違う曲が聞こえた。あの悲愴という悲しい曲ではない。もっと柔らかい。もっと綺麗な。
悲愴を赤とたとえるなら、それは青く、淡い薄紫のようだった。東の音楽に聞こえた。
「・・・・セツ?」
セツは手を止めて振り向いた。
「起きた?」
「・・・うん。今、何時?」
「7時。」
「え!夜?」
頷く。
「ごめん!お腹空いてない?御飯食べに行こう!」
立ち上がった。
「スピカ。」
「え?」
「スピカの探してる父親は、貴族なのか?」

「・・・・・・・。」
息が詰まった。不意討ちだ。それは華麗に僕の心臓を撃ちぬいた。
「ちょっとそう思っただけだ。・・・実は自分で言って驚いた。」
「・・・・・あ。」
僕は言葉がうまく紡げなかった。
セツはじっと僕の瞳の中を見る。心臓が高鳴る。
「セツ・・・・。」
「・・・行こう。」
セツは立ち上がってドアへ向かった。
「待って!」
セツの細い手を思いっきり引っ張ってしまった。
「・・・なに?」
どうして、彼女の目はこんなに真っ直ぐなんだろう。この声は不思議に甘いんだろう。そして、どうしてこん
なに強いんだろう。
「分からないんだ。よく。」
「・・・わからない?」
「本当はよくは分からないんだ。自分の父親が貴族なのかどうなのか。」
「・・・それは・・・。」
セツは言いかけて止めた。意図的に止めたように感じた。
「本当になにも分からない人なんだ。でも、貴族である可能性が出てきて・・・それで・・・。」
「・・・今回のコンチェルト、出てくれって頼んだんだな。」
頷いた。
言った。だけどそれは全て引きずり出さなくてすんだ。僕はほっとした。
「私は・・・。できるだけ貴族には関わりたくないんだ。」
「え?」
今度はセツが言い始めた。情報におけるフェア。彼女はそれを守る。それは頑なに。
「貴族の前で、目立ちたくない。」
「・・・・ごめん。」
「いい。自分の姿を変えるのは得意だから。本当にどうでもいい貴族の前には踊り出たって構わない。」
「・・・どうでもよくない貴族は・・。」
「ひとにぎりだ。だから、きっと問題ない。明日は男の格好で出る。それで問題ない。だから気にしなくてい
い。」
「・・・・・・ありがとう。」
僕は泣きたくなった。


86,
壁が壊れた。
それは不意討ち。
「・・・・何もしてないぞ。」
「したよ。セツ。」

彼は微笑んでた。満足げに。
「・・・私は情報におけるフェアを守っただけだ。」
「それでよかったんだよ。今回は向こうから壊してくれたって言ったほうが正しいけど。」
ちらりと内側にある塔を見る。
「明日、あの曲を弾いてよ、セツ。」
「・・・・・・・・・。」
「さっき弾いてただろ。久しぶりだった。僕はアレが一番好きだ。」
「・・・・・・あれは。」
「セツ色のベートーヴェンじゃない。あれはセツそのものの音がする。」
彼は目を閉じた。まるで耳を澄ますかのように。


87,
「セツ・・・!」
ラファルがやってきた。
「はい、これ。セツの服。」
「・・・ラファル。これ。」
ドレスだった。
「俺・・・。」
「レディなんだから、タキシードなんて似合わないよ。」
にこっと彼は笑った。
「・・・わかってたんだ。」
「僕、人を見る目はあるんだ。」
セツは複雑な笑顔を見せた。そのドレスは綺麗な色をしてた。僕は目を奪われる。
「でも名前。名前は変えてくれるんだろ。」
「うん。これでいい?クリスティーナ・バルバラ。」
「両方名前みたいな名前だな。」
「あはは。」
彼は笑った。
「じゃあ、楽しみにしてるよ。コンチェルトっていったって、大広間で弾くだけだからさ。」
「うん。まぁ頑張って余興になるよ。」
彼はにこっと笑って出ていった。
「あ・・じゃあ、僕も出てくね。」
「スピカ。」
「え?」
「悪いんだけど。手伝って欲しい。」
「・・・・は?」
「ドレスなんて、一人で来たこと無いんだ。」
「ちょ・・・セツ。だって。」
「一通りは一人で着てみる。大丈夫、誰も見たくないもの、見せたりしないよ。」
僕はくるっと後ろを向いた。なんだかすごく緊張した。毎晩一緒の場所に寝ている女の子なのに。    
 *

しばらくしてセツが僕の名前を読んだ。
「これでいいのか。」
僕は目を奪われる。
「スピカ?」
「あ。うん。ちょっと待って。後ろ、止めてあげるから!」
僕は慌ててドレスの仕上げをしてあげる。一応庶民のこういう場でのドレスだから色々簡易化されていて、単
なるホックが付いているだけだった。重ね合わせるような小難しい細工は一切無く、だけどとても美しいドレ
スだった。
「・・・髪の毛は、結わないの?」
「・・・髪の毛。・・・・後ろでくくるくらいしかできないな。」
セツは呟いた。僕は彼女を座らせる。彼女は何処からどう見ても女の子で、とても綺麗だった。綺麗だと思っ
た。彼女の髪に触れる。柔らかい。そしてアップして、髪を止める。花を刺す。
「・・・・すごいなスピカ。」
「あはは。ちょっと昔やった事があるんだ。」
「・・・ふーん。」
セツは鏡越しに僕を見た。僕はどきっとした。
「化粧は?してあげようか?」
「え?化粧まで出来るのか?」
僕は頷く。そしてセツの頬に触れておしろいを塗る。ゆっくりと。目をつぶって僕を見上げるセツの顔がとて
も愛しかった。どきどきする。小さな顔。
「スピカ。」
「うあ!だめだよいきなり目を開けちゃ。」
「ごめん。でも、スピカ、すごいな。と思って。」
「え?」
「私は化粧なんて、一人でした事が無いのに。スピカは他人に出来るんだ。すごいなと思っただけだよ。」
「・・・お褒めに預かり光栄ですお姫様。」
僕はにこっと笑った。
「ほら、もっかい目をつぶって。」
セツは黙って目を閉じた。


88,
「お姫様。」
「繰り返すな。」
セツは睨んだ。
「痛んだ?」
「・・・別に。」
彼はセツに触れた。柔らかい髪の毛。
「このナリは、君の生きる道。」
「・・・・・・・。」
「引き返せない、道。」

「・・・そうだよ。引き返さない。引き返せないから。」
「君は完成を求めてる。でも同時に、他に求めてるものがある。」
「・・・・なに。」
「復讐。」
「・・・・殴るぞ。」
彼は、怖いね、と言って笑った。
「覚えてる?旅を始めたきっかけ。強くなろうと思ったきっかけ。逃げるためじゃなかったろ。」
「・・・・逃げるためだった。」
「それもあった。だけど、別の感情も持ってた。」
セツは舌打ちした。
「一周目だよ。君の旅の一周目だ。」
「その時も、あんたはいたな。」
頷く。
「君の曲を、君の音楽をずっと聴いてきた。さ。行っておいで。」
「・・・・時間?」
「うん。君の音を、聴かせておいで。」


89,
僕は息を呑んだ。
セツの指が、いつもより軽やかだったこと。そしてその容姿がどうしても心を奪うこと。なによりセツが弾い
ている曲が、いつもの悲愴ではなかったこと。
誰の曲、だなんて訊いても知るよしも無い。だけど、とても好きだった。綺麗だ。ラファルも驚いていた。弾
くと思っていたあの重く暗い曲は鳴らない。悲しさを含んだ、それでも美しく、やわらかい曲が鳴る。それは
いつかめちゃくちゃだといっていた悲愴よりもずっと完成してた。そんなに難しいことをしてはいないからか
もしれないが、その手のタッチは時に迷っては美しい旋律をいいタイミングで奏でた。
周りの人間も食いいるようにセツを見ていた。セツの顔はよく見えた。髪の毛をアップしたせいもあるだろう。
化粧映えした顔は綺麗な女の子だ。だけど、僕の目には時折いつもの格好のセツが浮んだ。どっちのセツも、
同じ音をかもしだす。目を閉じる。
拍手が鳴った。僕も目を大きく開いて拍手をする。曲が終わったのだ。それは長い曲だった。変調もない、く
りかえし色んなパターンで主旋律を弾いていた。単純だけどそのパターンそれぞれが好きだった。
セツはお辞儀をして去っていった。僕は追いかける。
「セツ!」
裏の部屋でセツに出会う。セツは早速髪の毛を解こうとしていた。
「だめだよセツ!この後また挨拶にまわらないといけない。」
「・・・。」
めんどくさそうな顔をした。
「今行く。」
セツは歩きだす。そして大広間へ。赤い絨毯が美しい。豪華な部屋だった。きらびやかな人々が談笑している。
何人かがセツに気がつきやってきた。

「良かったですわ。なんていう曲ですの?」
「お名前は?」
セツは、ふんわりと笑顔でその質問に答えた。あの作った笑顔だ。
「曲名はありません。私はクリスティーナ・バルバラと申します。」
色んな人と握手をして、セツは挨拶にまわった。僕はその後ろをついて歩く。
パチパチパチ・・・。
突然後ろから拍手を受けた。セツは振り向いた。そして、げっと、いう顔をした。
「伯爵・・・っ。」
「え・・・。知り合い?」
「クシスだ。はじめまして。」
「クシス・・・?」
知っている。東の、この辺りの伯爵だ。
「あ・・・僕はスピカです。はじめまして。」
握手をした。
「やあセツ。また会ったと思ったら、今日は随分美しいじゃないか。」
「そりゃどうも。・・・なんで此処にいるんですか。貴方が。」
「あれ。私がここにいて、なにか変な事があるかな?」
「・・・まぁ、庶民のバーで会うよりは自然かもしれませんね。」
ははっと伯爵は笑った。
「そうだ、伯爵。」
「ん?」
「人探しをしてるんです。」
「おいおい。またかい。やつには会えなかったのか?」
「いえ、会えました。それに人を探してるのは、彼です。」
僕を見た。僕は背を伸ばす。
「ほう?で、誰を?名前は?」
「名前も何も分からないらしい。ちょっと話をきいてやってくれませんか。」
「いいとも、素敵なセツの頼みなら。」
セツは苦笑いを見せてその場を去った。
「セツのお友達かい?」
「・・・あ・・・はい。多分。」
「そいつは嬉しいね。仲良くしてやってくれ。やつはなかなか難しいが。」
「・・・あ、はい。」
にこっと伯爵は笑った。
「で?君の探している人物とは、どんな男なのかな?」
「・・・。」
僕は説明する。この人は伯爵だ。知っていることは期待できる。僕はできるだけ、隠さずに話した。もちろん
それが父親だという事は隠した。
「・・・うーん・・・。どうして彼を探す?」
「言えません。」

僕はそう答えた。伯爵はうなった。
「心当たりが、無いわけではない。」
「!」
僕は心臓が早く血を撃つのを感じた。
「西へ行きなさい。」
「西?」
「それは西の貴族だと聞いたことがある。」
「・・・・西の・・・貴族。」
やっぱり貴族だったんだ。
「いいコネクションをあげるよ。」
彼は紙に何かを書きだした。
「彼らに、これを見せれば大体お目にかかれると思う。」
羊皮紙にかかれたその名前と、そこにかかれた伯爵のサイン。
「なかなか難しいと思う。これは一級品の秘密だ。」
「・・・知っています。」
「それでも臨むんだね?」
「はい。」
「・・・セツと似て、頑なそうだ。」
伯爵は笑った。
「セツのこと、頼む。やつは無茶が大好きだ。」
「・・・無茶?」
「戦うだろう。」
頷く。
「・・・でも、セツは強いです。」
「・・・うん。」
伯爵は悲しく笑った。


90,
パチパチパチ・・・・。また拍手が大広間になる。
セツは振り向いた。さっきまで自分が弾いていたピアノの舞台の横にラファルが立っていた。バイオリンを持っ
て。御辞儀をする。そして美しい構えをする。
美しい旋律が始まる。
「ベートーヴェンだ・・・。」
呟いた。伴奏者のいないバイオリンソナタ。鳥肌が立った。綺麗な旋律だった。時々ベートーヴェンの色が消
える。きっとラファルの色だ。あぁ、なんか似てるな。
「なんか、似てるね。」
スピカが、不意に側に来て言った。
「え?」
「なんか、セツのピアノに似てる。」
「・・・・うん。」


7分ほど続くこのソナタをセツは黙って聴いていた。曲が終わると彼はまた御辞儀をしてセツを見た。そして
目配せで呼んだ。セツは小さく息をついて前へ躍り出る。
二人は手を繋ぎ、御辞儀をした。拍手が一層おこった。二人は一緒に裏へ消えていった。
「お疲れ、セツ。」
にこっと彼は笑った。
「悲愴、やめたんだね。」
「うん。」
「でも僕はあっちの方が好きだよ。すごく良かった。ありがとう。本当に。」
「ううん。そっちも。お疲れさま。良かった。」
「あはは。僕のバイオリン。変だっただろ?」
「・・・ううん。私はこういうのが好き。」
彼はえへへと笑った。
「僕ら、多分似てるんだ。だから、セツのこと、呼んだんだ。」
「・・・うん。」
「ありがとう。すごく楽しかった。また、いつか一緒に音楽しよう。」
「ありがとう。」
セツも笑った。そして硬い握手をする。
「あ・・・っ挨拶に行かないと。セツも行く?」
「ううん。私はもう一通り終わらせた。」
「そう。じゃあまた後で。食事でもしよう。」
「・・・うん。」
頷いた。
「セツっ。」
裏にスピカがやってきた。
「伯爵は何か手がかりをくれたか?」
「・・・あっうん。」
「よかったな。」
ふっとセツが笑った。僕も笑って頷いた。












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