饅頭を頬張りながら二人は歩いた。
「海座もたまにはいい提案するね。」
「え?」
振り向く。
「お小遣いくれたの海座なんだ。町にいってこいって言ったのも。」
「へぇ・・・」
「いっつもぐうたらやってるけど、今忙しくてお姉さんのこと見にいけないからね。気になって俺を使ったんだろ。」
ミヨは笑った。
美木も笑った。
楽しかった。
こんなに素直に笑えるのってない。
久しぶりだ。
あの日、すべてを失う日まで、それが普通の事だったのに。
いつの間にか、出来なくなっていたことだった。
背伸びをし続けた。
早く大きくなりたい。
そればっかり思った。
今も。小さく思ってる。
でも、笑うのは、失いたくない。
やっぱり。
子供かな。
「ミヨ殿!!!!!」
いきなりガラガラ声の叫ぶ声が聞こえた。
「!?」
二人は大きく振り向いた。
「探しましたぞ!ミヨ殿!!!」
そこに立つのは5人の男たちだった。
「知り合い?」
美木。
目を細めた。
どう見ても誘拐団にしか見えない。
「う・・うん。」
男の一人が近づいてきた。
「心配した!城なんかにつれて行かれたと聞いて探しましたぞ!」
なんかってなんだよ。
男はミヨの腕をつかんだ。
美木はその男をじっと見た。
目を細めると、その背中が、チラッと見えた。
正地の、印。
「!!」
美木は小さく身構えた。
「さ、我々と行きましょう!父上はもういらっしゃらないが帰る場所ならある・・・!」
引っ張る。
「ちょっ、ちょっと待って!」
「やめなよ。」
美木が呟いた。
男たちはばっと見た。
「・・・なんだぁ・・・?このガキは。」
「何でもいいだろ。帰る場所って、あんたたち。ミヨの家族?」
「・・口に気をつけろよガキ。家族よりもつよい結束だ!」
「ふぅん・・・何人兄弟なわけ。その家族は。」
男は無視した。
「ミヨ殿!何者ですか!このガキは!」
ミヨに噛み付く勢いで尋ねた。
「こ!・・・・この子は・・・友達・・・!美木・・・!」
「友達・・・・?」
チラッと美木を見る。
美木は睨んでた。
「どこで、知り合ったんだ?」
「し・・っ・・・城で・・・!」
空気が固まったきがした。
美木は寒気がした。
春の空気のせいじゃない。
「城・・・?」
「で!でも城の人は全然怖くなかったよ!!聞いてたのと全然違った!!」
「こいつは・・・城のモンなのか・・・・?」
美木を見た。
美木は引き続き睨んでた。
「か・・会計だって・・・!でも!」
「城の者なんだな。」
空気が今度こそ凍った。
男はゆっくりと美木を見た。
「てめぇ。ミヨ殿になに吹き込んだ。」
上から睨まないで欲しい。
「別に何も。正地の悪口なんか言ってないよ。」
「!!」
美木がたんたんと話す。
びりびり感じる男の殺気に耐えながら。
「・・・・っ真文国人が・・・・!」
「・・・・・だったら何さ。」
美木は睨み続けた。
「美木!」
ミヨが美木を見て叫んだ。
ひっぱられた手をそのままにして。
「お前らさえいなければァ!!!」
叫んだ。
男が叫んで、その背に背負った大きな刀を引き抜いた。
美木はその刀が放つ白い光をしっかり睨み続けていた。
目は閉じない。
殺気がひどくて脚が動かない。
握った拳が痛かった。
終わったと思った。
「美木っ!!!!」
ドッ・・・・・・
熱い。
血が。
熱い。
この血は。
どろどろ流れてくる。
どろどろ服を染めていく。
どろどろ手さえも染めてく。
「み・・・・・」
これは、誰の血だ。
「み・・・・・よ・・・・」
これは、ミヨの血だ。
ドバ・・・・!
血がいっそう激しく美木の茶色い髪にかかっていった。
「み・・・・・!美夜!!!!!!」
「ミヨ殿!!!!!?!?!?!?!?!??!」
男の持った刀は確実にミヨの身体を引き裂き、そしてその白い光をミヨの血で赤くした。
男たちはその光景を前に、驚きのあまり何も言えないような顔をして突っ立った。
「・・・ミヨ!・・・ねぇ!!ミヨ!!」
揺すぶった。
「ミヨ!!しっかりしてよ!!」
ゆすった。
「・・・・き・・・・・・・」
もうほとんどと息のような声だった。
周りが少しずつ騒ぎ出したから、かき消されそうだ。
「ミヨ・・・!ちょっとだけ我慢して!すぐ先生の所に連れて行くから!!」
ミヨは首を振った。
「・・・・と・・・」
「え!?」
「も・・だちに・・・なってくれて・・・あり・・・とう・・」
美木は背筋を伝う汗が嫌に冷たいのを感じた。
嫌だ。
やめろ。
「・・・は・・・じ・・・めて・・・・の・・・・」
「いいよ!!分かったから!黙って!」
美木は、だんだんかすれていく自分の声すら、聞こえなくなりそうで堅く目を閉じた。
「たんじょ・・び・・おく・・りもの・・・できな・・・ごめ・・・」
「わかったから・・・!」
ボタボタ・・・ミヨの頬を伝った涙が。
美木の手にかかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ミヨは、もう何も言わない。
「み・・・ミヨ!!」
震えた。
手が。
涙で滑りそうだ。
ボタ・・・
水が彼女の顔に降った。
これは。
「・・・・・・ミ・・・・」
これは。
オレの涙だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
口をつぐんだ。
力いっぱい。
そうしないと、嗚咽が漏れそうだった。
そうしないと、口は、ぶるぶる震えた。
「・・・・お前ら。」
美木が小さく、低く呟いた。
そしてゆっくりと、顔を上げた。
「・・・・・・・・!!!」
男たちは一瞬背筋を凍らせた。
「・・・・お前ら・・・・・ぁ・・・っ!!!!!」
睨みつけた彼の顔は、恐ろしかった。
「・・・っ!う!うるせぇぇ!!お前のせいだ!!!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
男はうろたえた顔を隠すように大声を上げて、刀を振り上げた。
美木はその間もミヨを抱きしめ、睨み続ける。
ああ。
俺に。
戦う力があれば。
ガキィィィィィィンンンンン!!!!!!
思った瞬間だった。
「こ・・・・っ」
「いっけねぇなぁ。」
振りかざされた刀を、しっかりと槍で受け止めて、美木の側でそう言った。
「高羅!!!」
「誰だこいつぁ!!!」
男たちは全員刀を抜いた。
「美木!来い!」
後ろから声がした。
海座だ。
美木は涙をきつくぬぐってミヨを抱え、引きずって海座のほうに向かった。
海座はその血まみれで、ひどい生傷のあるミヨを見て驚いた。
そして美木からミヨをひょいと抱えとり、すぐに布でミヨの傷口を抑え、ぐるぐる巻いた。
だけど、その布はみるみる紅く染まって、どろどろになった。
血が止まらない。
「・・・・っ」
海座は、歯を食いしばった。
「美木!お前も来い!城に戻るぞ!!!」
叫んだ。
そして走り出す。
だが、美木は、動かなかった。
「美木!!!??」
「・・・・・・」
血まみれだ。
俺。
他人の血で、血まみれだ。
耳鳴りがした。
「・・・・っ!先行くからな!はやく来い!!!」
そして海座は駆けだした。
そうしなければ、彼女は助からない。
美木は、立ちすくんだまま、自分の紅い手を見た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いっけねぇおじさん達だなぁ。なぁ?てめぇら。」   
高羅の声が響いた。
男たちはざわめいていた気がする。
「て!てめぇ!なに様だ!!」
「まて!こいつ!さっき・・・!高羅って・・・!」
ざわめいてた。
「そうそう。まったく、てめぇら正地の奴らは喧嘩うった相手を知るのが遅すぎる。」
笑うように呆れた。
「あんま、町の中で暴れてくれんなよな。」
「・・・・・っ」
「俺ぁ手加減が苦手なんだ。」
言った瞬間。
高羅は槍を振り回した。
どかっとか、どすっとか、鈍い音が響いた。
体が、鐘のようだ。
他の音を取り込んで、体の中で響いている。
なんだこれ。
周りの人間が、ざわめいてるのが分かった。
サイファもいたのかは分からない。
民が、高羅の振り回すやりに当たらないあたりに固まって居た気がする。
「うらぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!」
高羅の叫ぶ声が、頭を割りかけた。

世界が、割れそうだ。



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