次の日の昼になっても海座はまだ書類と格闘してた。
美木はそっと部屋を抜け出した。
麗春と高羅は一緒に錬兵場にいっていた。
美木は何も言わずに抜けだした。
そして、町にかけだした。
「お姉さん!」
思わず声を上げてしまった。民の道。店の前。
「?あらっ、君!」
サイファが奥から顔を出した。
そしてにこっと笑って少年を出迎えた。
美木はその笑顔に少しほっとした。
「どうしたの?入って。」
サイファが優しく手をひいて、店に美木を入れてあげた。
コト・・・
目の前にお茶が置かれた。
「・・・あ・・・ありがと」
サイファが客の少ない店の中で、掃除をし始めた。
「久しぶりね。随分顔見てなかったけどっ」
笑う。
美木はずずっとお茶をすすった。
「・・・久しぶり・・・。」
美木は少し笑って言った。
美木はまた茶をすすり、小さなため息をついた。
時。
ガッション・・・!
大きな音がした。
「!?」
音の方を見る。
そこに見えたのは大柄の見るからにチンピラみたいな男3人。
よってたかって何かを見ている。
下のほう。
美木が少し身を乗り出すと、 その眼線の先にあった物が見えた。
女の子だった。
「てめぇ今なにしたのか分かってんのか!!??」
怒鳴るなよ。
「見ろよこれ!まずそうな餡子まみれじゃねぇか!!!しっかり前見て歩けや!!!」
うるさいな。
「弁償しろ弁償!この着物は壬崔(みさい)の上物の綿と絹の天織なんだぜ!」
どうやら少女が饅頭かなんかをもって彼らの一人にぶつかってしまい、服を汚してしまったようだ。
なんてありがちな。
美木はため息をついた。
「一万双だ!一万双もってこいや!」
ガタン!
美木が立ち上がった。
「ありがちど真ん中だね。うるさいな。」
「!?」
「こんなところでカツアゲとはいい度胸だね。城下だよ、仮にも。」
美木が冷たい言い方をしながら近づいていく。
女の子は震えてた。
「カツアゲじゃねぇ!見ろこれ!!壬崔の天織が餡子だらけにされたんだぞ!弁償してもらうのはあたり前だろ!」
眉間にしわを寄せる。美木。
「間違ったコト2つもいってるよ、おっさん」
「あぁ!!??」
周りが美木を取り囲むように立った。
背がでかい。
小さい美木はすぐに周りから見えなくなった。
「ひとつはこれが詐欺恐喝ってこと。」
「だから言ってんだろ!」
「壬崔の天織?」
美木が鋭く餡子まみれのすそを見る。
「これが?」
「!?」
女の子がじっと見てる。涙なんか浮かべて。
「あんまり下手な嘘つかないでよね。壬崔の天織は今年は10反しかないんだよ。」
「!?」
「貴区の蚕が今年は駄目でね、免税申請を出したほど不作だったんだ。だから身崔の今年の天織は今年はレアもん。あんたみたいなむさいおっさんが買える様な 価格での取引はされてないんだよ。」
つらつらたんたんと美木が話す。
男は口をパクパクさせた。
「・・・・っ!こ!今年のとはいってねぇだろ!これは去年の・・・・・―――」
「去年の天織の染色は藍だよ。あんたのそれ、思いっきり白じゃん。そういうのって詐欺って言うんだよ。」
「・・・!」
何も言えない。
だって合ってるもん。
美木が免税の申請をしっかり管理して判を押したし、天織は城御用達でもあるから。
「それからもう1つ。」
口調は、強い。
「ここの饅頭は、餡子も旨いんだよ。」
思いっきり睨む。
9歳。
男たちはたじろいだ。
少女は目を丸くして見つめた。
「・・・・う・・・!うっせぇ!おまえみたいなガキに言われるこたぁひとつもねぇんだよ!!!」
やけになったみたいに男が叫んで、美木の胸倉を思いっきりつかんだ。
グン!っとひっぱりあげられる。
―――まただ。また子供扱いだ。
目で鋭く男の顔をにらむように見た。時。
「っていうか。」
ボキ・・・・バキ・・・・
「私の店の棚の鍋、壊したの、あんた?」
サイファが恐ろしい顔で横に立っていた。
腕をボキボキならして、おそろしい殺気を放ちながら、立っていた。
――あ。
「弁償金せびるまえに!あんたがうちの損害を賠償しなさいよねぇぇぇ!!!!」
ばきぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!
サイファの右拳がまっすぐ男たちに突き刺さった。
どさ!どさ!っと倒れる。
美木は驚いた。
強い!強すぎる。この少女。
「ふん!」
鼻で息を吐き出し、サイファは腕を組んだ。
「餡子を笑う物は餡子に泣くわよ!」
思いっきり言い捨てて、サイファは美木と少女の手をひいて店に入った。
――つっよ・・・・。
「大丈夫!!!?」
店に入って、影の方まで来てやっと腕を放し、向き合った。
サイファは座りこみ、二人の少年と少女に目の位置を合わせる。
「俺は平気。」
美木がたんたんと言った。
「あなたは?」
少女に尋ねる。
「・・・へい・・き。です」
やっぱりちょっと震えながら言った。
美木はそれを横目に、小さくため息をつく。
「名前は?」
サイファが優しく尋ねた。
他の客も興味津々って感じで、周りからちらちら見てた。
「美夜。」
変わった名前だった。
「そう、美夜ちゃん。家は?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
黙り込んだ。
美木は横目で見続けた。
サイファは言葉を捜して、悲しい顔をした。
「あっち・・・・・・・・」
指をさす。店の外。
「・・・・・・・そう・・・。」
サイファがうつむき、少女の肩に手を置いて、二回ほど軽くたたいた。
美夜は頷くとまた黙り込んだ。
美夜、と言う少女は、家はないのに身なりはそれほど汚れてなかったし、それなりに、この年齢の子供が持つにふさわしいとは言い難いほどのお金を持ってい た。
変な、迷子だな。
美木は思った。
「は・・・」
ため息。
「わかったよ。俺が城までつれてく。」
「え?」
美木が沈黙を切り裂いた。サイファはちょっと驚いた。
「城まで行けば拾い癖のある軍師とか、面倒見のいい総隊長とか。とにかく何とかしてくれる人間はたくさんいるからさ。」
美夜がじっと美木をみる。
「それじゃ私も・・・」
「お姉さんは店があるデショ。俺がちゃんとつれてくから、大丈夫だよ。」
「そ・・・・そう?」
あまりにはきはき美木がしゃべるからサイファも押されかけだ。
「うん。じゃ、また。来るね。」
そして美木は美夜の手をひいて店を出ていった。
「・・・・何者なんだろ・・・・美木って・・・・・」
呟いた。




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