「高羅ァァァァァァァッァああああああああ!!!!!!!!!!」
馬が駆け込んできた。二つ。
海座と、麗春。
瓦礫をかき分けるように、ものすごい速さで走ってきた。
「!!!」 
息を呑んだ。
鳥肌がたった。
「・・・・・・・・こ・・・・・高羅・・・・・・・」
海座が馬を下りる。
そこに立つのは、あの、総隊長だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
麗春があたりを見渡しながら静かに地面に降り立った。
まわりにある物は死体の山だった。
何百人という、正地の印をつけた男達の、死体。
その上に立つ、高羅。
うつむいて、顔が良く見えなかったが、その金にも似た茶色の髪の毛はすっかり紅く染まっていた。
「・・・・・・・・・・・・おめぇ・・・・」
海座が近寄った。
もう、日は、落ちかかっていた。
影が、高羅にかかる。
「これ・・・・・・・・・・」
「軍師殿。」
突然生き返ったかのように口を開くので海座はびくっとした。
「正地の残党は、とりあえず・・・ここにいるやつらは・・・・かたしといたから。」
それだけ言うと、高羅は、歩き出した。
海座は、最後まで高羅の顔を見ることはなかった。
「高・・・・・!!!」
呼びとめかけたが、どうにも、ならなかった。
背中。

正地の残党達の屍は、完全な武装をしてはいなかった。
とは言え、およそ500人もの相手を、高羅は1人でしたのだった。
それは、今まで調べてきた正地の残党のほぼ全員に値した。

ザリ・・・
死体を踏むことでしか進めないので、不安定な足場の上を、海座はゆっくりと歩いた。
「・・・・・・・」
すそが血まみれだ。
白い息も赤くなった気がした。
夕日のせいかもしれないけれど。
「・・・・・・・・・・すげえな」
こんだけの相手を一人でしたという、事実に息を呑んだ。
「そうね・・・・・・・・・・・」
ボツリ。
ポツリ。
「・・・・・・・・・・。麗」
「なに」
麗春は周りを見ながら言った。
目を合わさない。
「由姫殿を・・・知ってっか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええ。」
麗春が歩き出す。
海座を抜かす。
「・・・・・知ってるわ」
一度だけ、遠くから見た。
高羅と幸せそうに笑いあう姿を。
「・・・優しい人だった。」
「ええ」
見ていたから、知ってる。
「高羅も。」
海座が麗春を追う。
「同じくらい、優しいやつだ」
なにを言い出したのか麗春は分からなかった。
「いてぇだろうな」
麗春は振り向いた。
「今、いてぇだろうな。あいつ。」
海座が少し泣きそうな顔をしてるように見えた。
麗春は息を吐く。
白い息。
「・・・・・・・・・・・そだ」
海座が何かを懐からごそごそ取り出した。
「?」
「おら」
麗春に放る。
「・・・・・・・?」
麗春の手に落っこちてきたのは、糸、それから琴の爪だった。
「・・・・・・何これ」
「琴の弦と爪だよ。見て分かんだろ」
「・・・・・どうしろと?」
麗春がわけわからん、と言う顔をした。
「高羅に渡してくれ。」
「・・・・・・・・・は?」
「それ、最近見っけたんだ。先日亡くなった元由姫殿の女官の遺物から・・・・・。」
海座が頭をかきながら言った。
「・・・・多分、ずっと昔、渡されたのを、忘れて取ってたんだろ・・・・・。」
「・・・・・・・」
「高羅に渡そうと、探してたんだが・・・・、ま・・・今日は・・・・こんなになっちまったからな・・・・。」
海座が寂しそうに笑った。
死体をふんずけて歩くのはやっぱりいい気持ちしなかったし。
「俺から渡すのも・・・・なんだからな。というか・・・麗の方が・・・今はいい気がして。頼めねぇか?」
殺す痛みを、知っている。彼女だから。
今の高羅の痛みを一番わかってやれるのは、彼女しかいなかった。
麗春は小さなため息をついた。
「・・・・・・分かったわ。」
海座は悪いな、と言って笑った。
「もうすぐ、兵も着くだろ。ここの後片付けやんなきゃなんねぇ。じゃっ。俺は指示だしに行くから、頼んだぞ。」
海座は向きを変え背中をむけて、また死体の上を歩き出した。
麗春は夕日に浮かぶ軍師を少し目で見送って、また前を見て、歩き出した。 



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