Love Letter From Death 第8話


今日、決着めよう。

―――5人

私がきて4日、5人の兵が、喰われた。


―――・・・カラス・・・

「死を・・・恐れよ・・・。」
呟く。
「いざなおう・・・死界へ・・・―――」

―――私・・前よりきっと強くなったわ。

だから。


「・・・。」
愛は張りこんでいた。
もう着物なんて着ない。いつもの私服でフィリアを見張るために張り込んでいた。
緋憂が見つからなかった。
あれから4日たったが、緋憂が現れない。
しかし、彼は霊体だ。フィリアに食われることもない。
だからあとで見つけてやろう。それくらいに考えていた。
「!」
―――来た!
身構えた。

その同刻。

「・・・んあ?」
はっと、目を覚ました。
「え・・・!ここは・・・?」
起き上がる。
「どこだ?」
つーか、あいつは?愛がいない。
自分は遊霊だからいいとして、彼女は今人間化している。
あの人喰い女に喰われてはいやしないだろうか?
カツン。
「!」
ばっと振り向く。人の気配だ。
緋憂は叫んだ。悪寒が、したからだ。
「誰だ!」

「・・・あれ?」
愛は拍子抜けしていた。
誰か来た、と思ったのにそこには誰もいなかった。
じりっと、物陰から周りの様子を見ようと、した時だった。
「お姉ちゃんは、こっちだよ・・・。」
声が、後ろから。呼び掛ける。
「!フィリア!?」
どうして、後ろから!?

血が飛んだ。

「!?」
その血は、出るはずもない男の頬から流れていた。
「・・・フィ・・・・。」
どばっと、頬の切り傷から血液が溢れだす。
カツン。
カツン。
近付いてくる。
「フィリア・・・?」
緋憂は唖然とした。
近付いてくる女は、間違いなくフィリアだ。
そしてそれは、生身の人間であるはずなのだ。
「・・・なんでだ?」
―――なんで・・・。なぜ触れる?
遊霊に、人間が触れられるはずがないのだ。
「!」
はっとする。
フィリアから流れてくる霊気が、極度に冷たい。
口元が、笑っている。
「フィリア・・・。」
でも。
「お前・・・。」
彼女は泣いていた。
「殺す!」
「!」
突然彼女が襲いかかってきた。
「な!うわ!」
首を両手でつかまれた。
油断だ。油断していた。
彼女は自分には触れまいと。
しかし、フィリアは確実に緋憂の喉元をつかみ、ものすごい握力で絞めてくる。
「っ・・・ぅ!く・・・!」
力が、底知れぬほど強い。
「肉を・・・。」
「!?」
「死神・・の・・・。」
フィリアの口から、震える声が飛び出してくる。
―――肉?死神の?!なんだそれは!

「フィリア!出てきなさい!」
愛は姿の見えない声の主を追って、城の中を走っていた。
声だけが聞こえてくる。
可愛らしい声だ。フィリア、だと思う。
くすくすと笑っていた。
「此処ね!」
愛が、階段の隅にある部屋に飛び込んだ。
クスクスクス、と笑いが響いていた。
「馬鹿なお姉ちゃん。」
女の声が響いていた。
「―――・・・。な・・・!」
でも、そこにいたのはフィリアではなく。
「・・・人形・・・・。」
人形の、アリスがそこに座っていた。
あの夜、足元に転がっていたあの不気味な人形だ。
フィリアが母の形見だと、言っていた、あの人形だ。
「・・・人形で、驚いた?死神のお姉ちゃん?」
「!」
目を見開き、口元が微笑んだままの人形が語りかけてきた。
それは、ぞっとする、としか言いようがない恐ろしさだった。
「ふふ・・・。だいたいあの虫も殺せないボンボンに・・・霊をとりこんで人を喰うような真似ができるわけがないでしょう?」
「・・・アリス。あなたね・・・彼女の体を乗っ取ろうとしているのは・・・。」
睨む。にじむ。汗。
「・・・クス。」
アリスは嫌な笑い方をした。
「カンチガイダヨ。オ姉チャン。」
「!」
声が、変容し始めた。
「私はアイツをドウコウしようとしているんじゃない。アイツは―――」
人工音のような、ひどくしわがれた老婆の声のような、美しい娘の断末魔の声のような。
「エサナノダカラナ」
言い切ったその声は、人のものではなく、悪鬼の声そのものだった。
「・・・っな・・・。」
愛はひるみそうになり、それでも睨みつけた。
なんだ、この圧倒的な霊圧は。
「アイツが騒げば、必ず死神が来る。死神ほど殺しがいのあるモノはないからな。」
「・・・今まで・・・何度も?」
ぞっとした。
これは。
「死神は悪霊、いや、ゴーストの敵だ。消えてくれたら喜ぶ奴はタクサンいる。なにより。」
これは、まずいかもしれない。
「ワタシハ死神ガ キライダ!」
ひゅ・・・ッ!
「うあああああ!」
愛は、突然発生した術の風によって飛ばされてしまった。
ドカ!
石の壁にぶつかり、ひっくり返ってしまう。
「ッ・・・った・・・!」
咳がでた。すごい勢いで背中をぶつけたのだ。同時に切ってしまった唇から血が噴き出して血の味がした。
ノーモーションでこんな攻撃をしてくる悪霊は、なかなかいない。
死神殺しをするほどの知恵をつけた悪霊だ。これは、生まれて十年、とかそんなレベルの悪霊じゃない。
「死神は転生をしない、そういう契約をしている、そうだな?」
すっと、腕を伸ばしてくる。カチリ、と人形の腕が鳴る。
「その契約の代わり現世の物理的な感覚を授かる。・・・やっかいな身体だな。」
そして、その腕をメキリと言わせ、思いっきり振った。
―――来る!
やばいのが来る。それは一瞬の、確信。
「っひ・・・!」
どおしよう!?
「緋憂―――――――!!」

「くそ!」
緋憂は、ざざっと足を滑らせて、距離をとる。
「く・・はぁ・・・はぁ!」
息が上がる。
―――今、声。したか?
「どけ・・・!フィリア!」
緋憂は、叫んだ。
「どけッ!」

■最新第9話は次回の拍手にて■


 

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